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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 9, 2002
Vol. 346 No. 19

  • 小型の腹部大動脈瘤に対する外科的修復と画像診断による監視の比較
    Surgical Repair versus Surveillance by Imaging for Small Abdominal Aortic Aneurysms

    小型の腹部大動脈瘤に対する外科的修復と画像診断による監視の比較

    臨床的に安定した小型の腹部大動脈瘤を,外科的に修復すべきか,定期的に非侵襲的画像診断法によりモニターすべきかについては,議論の余地がある.この研究では,直径 4.0~5.4 cm の動脈瘤を有する患者を対象に,これらの 2 つの方法を比較した.平均追跡調査期間約 5 年後では,即時外科修復に関連する生存率についての利点は認められなかった.
    この知見は,待機手術を,直径 5.5 cm 以上の腹部大動脈を有する患者に対してのみ行うという保存的な治療方針を支持している.急速に大きくなりつつある小型の無症候性の動脈瘤を有する患者には,手術が考慮されるべきである.

  • 小型の腹部大動脈瘤に対する手術と監視の長期転帰
    Long-Term Outcomes of Surgery Compared with Surveillance of Small Abdominal Aortic Aneurysms

    小型の腹部大動脈瘤に対する手術と監視の長期転帰

    小型の腹部大動脈瘤(直径 5.5cm 未満)は,破裂のリスクが低いと考えられている.この研究では,緊急手術と,超音波検査による監視を行い必要な場合に手術を行うという,2 つの管理方法を比較した.手術死亡率のため,はじめは監視群の生存率のほうが良好であったが,8 年後には早期手術群の生存率のほうが良好となった.
    2 つの方法で平均生存率に差がなかったことから,動脈瘤が直径 5.5 cm を超えるまで超音波検査による監視を行うことは,合理的な方法といえる.

  • ニューヨークにおける結核伝染の変化
    Changes in the Transmission of Tuberculosis in New York

    ニューヨークにおける結核伝染の変化

    1992 年以来,米国における結核の発症率は約 50%低下しているが,外国生まれの人々では低下がみられない.ヒト型結核菌分離株 546 検体の今回の分析では,48%が新たな集団感染に属し,52%が属していなかった.外国での出生は,独自の分離菌を有していることのもっとも確かな予測因子であり,集団感染の一部ではない散発性症例であることを示唆していた.
    ニューヨーク市における上記の知見は,外国生まれの人の結核のほとんどが,目下のところ最近伝染したものというより潜伏性疾患の再燃であることを示唆している.結核管理の戦略は,無症状感染を有している移民に対する治療の増大へと移行しなければならないだろう.

  • Images in Clinical Medicine:腹部大動脈瘤
    Images in Clinical Medicine: Abdominal Aortic Aneurysm

    Images in Clinical Medicine:腹部大動脈瘤

    70 歳の男性が,6 cm の腹部大動脈瘤で受診した.開腹外科手術はこの患者に対してはリスクが高いと考えられ,動脈内挿型人工血管による治療を受けた.この再建にもかかわらず,動脈瘤はその後 36 ヵ月間大きくなり続け,直径 7.2 cm に達した.

  • 褐色細胞腫における生殖細胞系変異
    Germ-Line Mutations in Pheochromocytoma

    褐色細胞腫における生殖細胞系変異

    生殖細胞系変異は,褐色細胞腫や傍神経節腫を含む家族性グロムス腫瘍においてはよくみられる.この研究では,4 つの遺伝子(原癌遺伝子 RET,フォンヒッペル-リンダウ病関連遺伝子 [VHL],コハク酸脱水素酵素サブユニット D の遺伝子 [SDHD] およびコハク酸脱水素酵素サブユニット B の遺伝子 [SDHB])における思いも寄らない生殖細胞系変異が,見掛け上,非家族性で非症候群性の褐色細胞腫の症例の一部の原因となるのかどうかを検討した.見掛け上,散発性の褐色細胞腫の患者 271 例中 66 例で,これら 4 遺伝子のうちの 1 つに変異がみられた――VHL では 30 例,RET では 13 例,SDHD では 11 例,SDHB では 12 例.
    褐色細胞腫関連症候群を同定することは,患者にも血縁者にも重要であることから,見掛け上,散発性の褐色細胞腫を呈する患者には遺伝子スクリーニングを実施すべきである.

  • Clinical Practice:冠動脈疾患の一次予防のためのアスピリン
    Clinical Practice: Aspirin for Primary Prevention of Coronary Events

    Clinical Practice:冠動脈疾患の一次予防のためのアスピリン

    若年発症心疾患の確固たる家族歴を有する 45 歳の男性で冠動脈疾患の症状はなく,心電図も正常である.空腹時の総コレステロール値は 225 mg/dL で,低比重リポ蛋白コレステロール値は 160 mg/dL,高比重リポ蛋白コレステロール値は 35 mg/dL である.患者には高血圧の既往はなく,たばこを吸わない.患者に,心筋梗塞のリスクを減らすためアスピリンを服用するよう助言すべきであろうか?
    この論文では冠動脈疾患の一次予防におけるアスピリン療法の役割を概説する.

  • Sounding Board:Wendland 判例 ― 終末期状態ではない機能不全患者における生命維持治療の中止
    Sounding Board: The Wendland Case ― Withdrawing Life Support from Incompetent Patients Who Are Not Terminally Ill

    多くの患者は終末期の決定を自分で行えなくなった場合にだれが決めるべきかについての正式な計画を有していない.この“Sounding Board”の論文では,終末期ケアについて妻子と正式ではない会話を行ってはいたが,自分の希望や自分自身で行動できなくなった場合にだれがそれを行うべきかを正式文書として作成していなかった男性の例を取り上げる.自動車事故で受けた頭部外傷は生命を脅かすほどではないが,重大な神経障害となった.重大な決定において,カリフォルニア州最高裁は,経管栄養法を続けないことを希望した妻と娘側ではなく,患者を生かせておきたいという母親側を支持した.著者はこの判例とその終末期決定への影響を概説する.