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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

June 20, 2002
Vol. 346 No. 25

ORIGINAL ARTICLES

  • びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫に対する化学療法後の生存期間を予測するための遺伝子発現プロフィールの使用
    Use of Gene-Expression Profiles to Predict Survival after Chemotherapy for Diffuse Large-B-Cell Lymphoma

    びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫に対する化学療法後の生存期間を予測するための遺伝子発現プロフィールの使用

    びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の大規模な患者集団において,DNA マイクロアレイにより,化学療法後の生存確率と相関する 3 つの遺伝子発現パターンを同定した.これら 3 パターン内の個々の遺伝子は,化学療法後の生存期間とより強い相関を示す分子サイン信号を形成した.分子サイン信号の予測能力は,国際予後指標とは独立していた.
    DNA マイクロアレイは,組織標本内の何万という遺伝子の活性を反映する.成人でもっとも多いリンパ腫に関するこの研究では,リンパ組織で発現している 12,000 以上の遺伝子に焦点を当て,予後に強く関連する 17 の遺伝子を発見した.この研究は,マイクロアレイ技術が,臨床的に有用な癌の分子遺伝学の理解といかに関連があるかを示す例である.

  • 心症候群 X における心内膜下の灌流異常
    Abnormal Subendocardial Perfusion in Cardiac Syndrome X

    心症候群 X における心内膜下の灌流異常

    心症候群 X の患者では,狭心症および運動負荷試験の結果異常がみられるが,冠動脈造影所見は正常である.心筋虚血が原因であると疑われてきたが,これを立証するのは困難であった.この研究では,症候群 X 患者 20 例おいて,アデノシン投与中に心筋灌流磁気共鳴画像が心内膜下の灌流異常を示した.
    灌流磁気共鳴画像法は,心筋虚血の検出に関してきわめて感度の高い技法である.今回の知見は,心症候群 X の原因として虚血を明確に指摘しており,治療に対するアプローチに新たな見識をもたらすことから重要である.

  • 腎血管性高血圧症における血管内皮機能および酸化ストレス
    Endothelial Function and Oxidative Stress in Renovascular Hypertension

    腎血管性高血圧症における血管内皮機能および酸化ストレス

    腎血管性高血圧症はレニン-アンジオテンシン系を活性化させるが,これは酸化ストレスおよび血管内皮の機能不全を増大させかねない.この研究では,患者 15 例および対照被験者 15 例を対象に,経皮経管腎動脈血管形成術の前後において血管内皮の機能不全の指標としての前腕血流量を検討した.血管内皮依存性血管拡張薬であるアセチルコリンに対する前腕血流量の反応は,腎動脈狭窄症患者では対照群に比べて減少したが,血管形成術後には改善した.血管内皮非依存性血管拡張薬である硝酸イソソルビドへの反応は,すべての状態で両群同様であった.酸化ストレスの指標である尿中 8-ヒドロキシ-2'-デオキシグアノシンおよび血清中マロンジアルデヒド修飾低比重リポ蛋白は,血管形成術後に減少した.
    これらの知見は,酸化ストレスの増加が腎血管性高血圧症患者の血管内皮依存性血管拡張の障害と関連することを示唆している.

  • 腸のミクロスポリジウム症のフマギリン療法
    Fumagillin Treatment of Intestinal Microsporidiosis

    この二重盲検試験には,慢性下痢および Enterocytozoon bieneusi 感染を有する免疫不全の患者 12 例が参加した.フマギリンによる治療(60 mg/日を 2 週間経口投与)により,6 例中 6 例で症状がいくらか改善され,寄生虫が駆除されたが,プラセボ群の 6 例では効果はみられなかった(P=0.002).最終的に全例がフマギリン投与を受けたが,3 例に重度の好中球減少または血小板減少が発現した.
    重度の免疫不全状態の患者においては,慢性下痢,吸収不良,体力消耗の原因となる腸のミクロスポリジウム症に対する効果的な治療法はこれまでなかった.かつてマラリアの治療に用いられたフマギリンは,日和見性寄生虫感染に対する効果的な治療法である.

CLINICAL PRACTICE

  • Clinical Practice:胸水
    Clinical Practice: Pleural Effusion

    Clinical Practice:胸水

    80 箱・年の喫煙歴とうっ血性心不全の既往を有する 70 歳の男性が,息切れの悪化を訴えて受診した.右胸には疼くような痛みがあり,深吸息により悪化するという.熱はない.胸部 X 線検査では,胸水が右側に多い,非対称性両側性胸水が認められる.この患者をどのように評価すべきだろうか?

REVIEW ARTICLE

  • 医学の進歩:熱中症
    Medical Progress: Heat Stroke

    医学の進歩:熱中症

    熱中症における分子・細胞イベントの知識は,この 10 年で着実に進歩した.熱中症が熱の細胞毒性作用だけではなく,患者の炎症反応および凝固反応の結果としての複数の組織・器官の損傷と関連していることは現在知られている.熱ショック蛋白の表現変化も,熱中症の病因に対し役割をもつ可能性がある.この論文は,熱中症の病態生理に対する現在の理解と治療の進歩について概説している.