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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

October 10, 2002
Vol. 347 No. 15

  • アドレナリン受容体の多型と心不全
    Polymorphisms of Adrenergic Receptors and Heart Failure

    アドレナリン受容体の多型と心不全

    交感神経系の持続的な活性化は,心不全の発現と進行の一因となる.この研究では,交感神経活性の増加に関係する,β1 および β2C アドレナリン受容体における 2 つの多型を検討した.黒人被験者では,これらの多型,とくに両方の多型が存在する場合,心不全のリスクが顕著に増加した.
    心不全の発現や進行には,人によってかなり差異がある.この研究では,この差異の一因となる可能性がある遺伝因子を同定している.

    • やや広範囲の肺塞栓症に対するアルテプラーゼ
      Alteplase for Submassive Pulmonary Embolism

      やや広範囲の肺塞栓症に対するアルテプラーゼ

      血栓溶解は広範囲肺塞栓症患者の治療において有効であることが知られているが,その有効性は,やや広範囲の肺塞栓症患者ではあまり確かではない.この大規模無作為試験では,やや広範囲の肺塞栓症患者の治療において,ヘパリンとアルテプラーゼの併用投与が,ヘパリンとプラセボの併用投与よりも優れていることが明らかになった.
      ヘパリン単独投与を凌ぐヘパリン+アルテプラーゼ併用投与の優位性は,主に二次的な血栓溶解療法の必要性が減少したことによるものであった.併用療法による重篤な出血リスクの増大はなかったため,禁忌がない場合は併用療法の利用を考慮すべきである.

      • アトピー性皮膚炎における内因性の抗菌性ペプチド
        Endogenous Antimicrobial Peptides in Atopic Dermatitis

        アトピー性皮膚炎における内因性の抗菌性ペプチド

        皮膚のブドウ球菌感染は,健常者や乾癬患者よりもアトピー性皮膚炎の患者により多くみられる.この研究では,研究者らはアトピー性皮膚炎における皮膚感染率の増加は,内因性の抗菌性ペプチドである LL-37 やヒト βデフェンシン 2 濃度の低下が原因であるかもしれないという仮説を立てた.研究者らは,これらペプチドの濃度がアトピー性皮膚炎患者の皮膚ではより低いことを見出した.
        これらのデータは,皮膚の内因性の抗菌性ペプチドの不足がアトピー性皮膚炎患者における感染の増大を説明するかもしれないという証拠を提示している.こうした概念の証明には,これらペプチドを増加させることが結果として皮膚感染を減らすことを実証する必要があるだろう.

        • Special Article:遺伝性ヘモグロビン異常症に関する拡大家族のスクリーニング
          Special Article: Screening Extended Families for Genetic Hemoglobin Disorders

          Special Article:遺伝性ヘモグロビン異常症に関する拡大家族のスクリーニング

          この論文は,発展途上国における劣性遺伝性疾患キャリアの同定およびカウンセリングに対する実現可能な戦略について報告している.発端症例(通常は疾患患児)のある拡大家族を検査することを,アプローチの基礎としている.
          近親婚および,βサラセミアとヘモグロビン S の遺伝子が多くみられるパキスタンでは,輸血依存性 βサラセミアの新生児が毎年 5,000 例を超えて産まれている.平均年収が 420 ドルの国においては,先進国で用いられている方法による遺伝性疾患のスクリーニングは,実際的でない.この論文は,キャリアを同定するための実際的な方法について説明し,カウンセリングによって費用のかかる遺伝性疾患の発生率を減少させることが可能であることを示唆している.

          • Clinical Practice:中耳炎
            Clinical Practice: Otitis Media

            Clinical Practice:中耳炎

            ほかの点では健康な 17 ヵ月の男児が,2 日間の鼻漏,咳,発熱(最高 38.8℃)を伴う風邪にかかった.5 日目に,男児はぐずるようになり,夜間に泣いて目を覚ますことが数回あった.翌日熱は下がり,診察では中耳液はないが左の鼓膜がわずかに赤く,右の鼓膜が背後に白い液体を伴い鼓膜臍が不明瞭になって腫れている以外は正常であった.この患児をどのように治療するべきだろうか?

            • 医学の進歩:Helicobacter pylori 感染
              Medical Progress: Helicobacter pylori Infection

              H. pylori は,ヒトでもっともよくみられる細菌感染の 1 つである.20 年前の H. pylori の発見は,胃十二指腸疾患の診断と治療を変化させた.この論文は,H. pylori の疫学と伝播に関する現在の知識,ならびに上部消化管疾患の病因におけるこの感染因子の役割に関して考察している.診断法,治療の適応,および治療有効性の判断基準が概説されている.
              1998 年の米国のガイドラインは,治療が予定されている場合のみに H. pylori の検査を行うことを推奨している.検査とその後の治療の主要な適応症は,活動性消化性潰瘍疾患,確実な消化性潰瘍の既往,または胃粘膜が関連したリンパ組織リンパ腫などである.