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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

October 24, 2002
Vol. 347 No. 17

  • アスピリンと冠動脈バイパス手術による死亡率
    Aspirin and Mortality from Coronary Bypass Surgery

    アスピリンと冠動脈バイパス手術による死亡率

    冠動脈バイパス手術を受ける患者では,出血が懸念されるため周術期のアスピリン使用が避けられることが多い.この大規模多施設共同観察研究では,術後 48 時間以内に開始されたアスピリン療法が死亡率を低下させ,心臓,脳,腎臓および消化管の虚血性合併症を減少させることが示された.出血の増加は認められなかった.
    これらの知見は刺激的であるが,無作為試験から得られた知見ではないため,気付かれていないバイアスの影響を受けやすい.アスピリン療法による死亡率の相当な低下は非常に重要であるが,アスピリン療法を常用手段とする前に,無作為試験で確認する必要がある.

  • 腹式子宮亜全摘術と腹式子宮全摘術の比較
    Subtotal versus Total Abdominal Hysterectomy

    良性疾患のために子宮摘出を勧められた女性,合計 279 例を,腹式子宮全摘術あるいは腹式子宮亜全摘術に無作為に割付けた.術後 12 ヵ月では,両群において尿症状や尿力学的試験の指標に同様の改善がみられた.いずれの手技でも腸あるいは性機能に対する有害作用はみられなかった.腹式子宮全摘術では,入院期間がより長くなった.周期的出血は,子宮亜全摘術群の 7%で術後に発現した.
    これらのデータは,腹式子宮全摘術も腹式子宮亜全摘術も,膀胱,腸あるいは性機能に有害作用を及ぼす可能性は小さいという再確信を与えている.ただし,術後の子宮頸部脱のリスクを明確にするためには,より長い追跡調査が必要である.

  • 肥大型心筋症における中隔の非外科的縮小
    Nonsurgical Reduction of the Septum in Hypertrophic Cardiomyopathy

    肥大型心筋症における中隔の非外科的縮小

    肥大型心筋症と左心室の流出路閉塞を有する患者には,β遮断薬やカルシウムチャネル拮抗薬による薬物療法に反応しない者もいる.その場合,ときに外科的な筋摘出術が推奨される.この研究者らは,中隔穿通枝にアルコールを注入して中隔の梗塞形成を調節する肥大中隔の非外科的縮小について,予備的観察を報告している.
    この手技は,流出路閉塞を減らし,心機能を高めるのに効果的であった.観察は重要であるが,手技はまだ実験段階と考え,慎重に選択した患者を対象とすべきである.

  • Special Article:契約規定の全国調査
    Special Article: A National Survey of Contract Provisions

    2001 年,医学雑誌編集者国際委員会(International Committee of Medical Journal Editors;ICMJE)は,著者が企業スポンサーから独立することと,研究におけるスポンサーの役割の完全な開示を要請した.この全国調査は,大多数の医科大学の企業スポンサーとの臨床研究契約が,試験計画,データ利用,出版権に関して ICMJE 指針を遵守していないことを明らかにしている.
    企業と医科大学間の最近の多くの契約は,私的資金による生物医学研究の誠実性を適切には保護していない.医科大学や病院の契約担当者は,当該機関の研究者の研究の自由を確保することに努力する必要がある.

  • Clinical Practice:2 型糖尿病
    Clinical Practice: Type 2 Diabetes Mellitus

    無症候の 45 歳のヒスパニック系男性は,空腹時血漿グルコース濃度は,初期評価で 142 mg/dL(7.9 mmol/L)を示し,再評価では 139 mg/dL(7.7 mmol/L)を示した.大学以降の持続的な体重増加と境界域高血圧症以外は,患者の病歴に目立つ点はない.身長は 175 cm,体重は 95 kg(体格指数 31.2)で,血圧は 138/88 mmHg である.診察では,腹部の肥満とアキレス腱反射消失のみ顕著であった.この患者をどのように治療するべきだろうか?

  • Clinical Implications of Basic Research:RNA 干渉と HIV
    Clinical Implications of Basic Research: RNA Interference and HIV

    Clinical Implications of Basic Research:RNA 干渉と HIV

    最近発見されたタイプの RNA,短い干渉 RNA は,メッセンジャー RNA(active gene の転写物)の特定の配列に結合することにより,メッセンジャー RNA のサイレンシングを起こす.短い干渉 RNA は,特定のウイルスメッセンジャー RNA の分解を誘発することにより,in vitro で HIV の複製を阻止できる.この研究は,HIV 感染のみならず,癌細胞の増殖をも制御する新たな可能性を示している.
    短い干渉 RNA に関する研究の最近の急増は,ウイルス複製および腫瘍細胞増殖の制御に対するまったく新しいアプローチの始りを知らせている.

  • Sounding Board:産業界との協力 ― 大学医療センターの選択
    Sounding Board: Collaborating with Industry -- Choices for the Academic Medical Center

    大学医療センターと企業との提携は,数においても規模においても増加している.これらの提携は,新しい診断技術や治療技術の開発を通じて公衆に利益を与える可能性がある.また,大学医療センターと企業とでは,目的が多くの点で異なることがあるために,かなり問題を引き起す可能性もある.この論文では,主要な大学医療機関の指導者が,相互交渉における特定のポイントをうまく管理するための手引きを提示している.