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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
December 19, 2002
Vol. 347 No. 25
This Week in the JOURNAL
ORIGINAL ARTICLES
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乳癌における生存率の予測因子としての遺伝子発現特性
Gene-Expression Signature as a Predictor of Survival in Breast Cancer乳癌検体約 300 例の 70 遺伝子の発現パターンは,2 種類の遺伝子特性を示した.全生存率および遠隔転移の発生に基づいて判断すると,一方は良好な予後に関連しており,もう一方は不良な予後に関連していた.これらの特性は,腋窩リンパ節の関与,標準的な臨床的ならびに病理学的予後指標とは独立して転帰と関連していた.
この研究は,マイクロアレイ技術の臨床応用における重要な進歩を表している.乳癌に関する遺伝子特性がリンパ節の関与の有無とは独立して転帰と関連しているという知見には,重要な生物学的ならびに臨床的意義がある. -
維持透析における透析量と膜透過流量の影響
Effect of Dialysis Dose and Membrane Flux in Maintenance Hemodialysis透析量と除去される分子のサイズは共に,長期間血液透析を受ける患者の罹患率と死亡率に影響を与える可能性がある.多施設共同血液透析研究(Hemodialysis Study)では,患者 1,846 例を,2×2 因子のデザインを用いて,現在米国で推奨されている標準的透析量または高透析量で,高流量または低流量のダイアライザーに無作為に割付けた.平均 2.84 年間の追跡期間中,全死因死亡率と罹患率は群間で異ならなかった.
これらのデータは,現在の米国の指針における処方最小透析量を増加させることや低流量透析膜を高流量透析膜に変更することでは,大きな利益は得られないことを示唆している. -
侵襲性カンジダ症の治療のための新規薬剤
A New Agent for the Treatment of Invasive Candidiasisカスポファンギンは,カンジダ種の細胞壁に対して活性をもつ,新しいエキノカンジン系の薬剤である.この二重盲検試験では,カスポファンギンが,かなりの毒性を有するアムホテリシン B と同程度有効であるかどうかを検討した.侵襲性カンジダ症患者 224 例のうち,カスポファンギンで治療を受けた患者の 73.4%で良好な転帰を示したのに対し,アムホテリシン B 療法患者では 61.7%であった.腎毒性作用の頻度は,アムホテリシン B よりもカスポファンギンにおいて低かった.
カスポファンギンは,少なくともアムホテリシン B と同程度有効であるとみられ,かなり毒性が少ない.この試験では,好中球減少症の患者はほとんどいなかったため,この高リスク群におけるカスポファンギン療法の評価がさらに必要であろう.
SPECIAL ARTICLE
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産後の早期退院を禁止する法律の影響
Effects of a Law against Early Postpartum Discharge2 日間の産後入院を命じるマサチューセッツ州の法律により,産後 1 晩の入院と 1 回の自宅訪問を提供してきた健康維持機構(HMO)の早期退院プログラムが廃止されたあと,出生後 3 日または 4 日目に新生児検査が行われる頻度が少なくなった.しかし,HMO と州の政策は,新生児の健康上の転帰や HMO 支出額にほとんど影響を与えなかった.
より短い入院期間は,新生児の有害な転帰と関連していなかった.病院の費用が変化したため,病院利用の変化は,HMO 支出額にほとんど影響を与えなかった.
CLINICAL PRACTICE
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市中肺炎
Community-Acquired Pneumonia高血圧と変形性関節症を有する 65 歳の男性が,3 日間の湿性咳嗽と発熱のため救急部を受診した.体温 38.3℃(101℉),血圧 144/92 mmHg,呼吸数 22 回/分,心拍数 90 回/分,室内空気で酸素飽和度は 92%である.診察では,右下肺野に断続性ラ音とヤギ音のみ認められる.白血球数は,14,000/mm3 であり,ルーチン化学検査は正常である.胸部 X 線写真は,右下葉に浸潤影を示している.この患者をどのように治療すべきであろうか?
DRUG THERAPY
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ハーブ薬
Herbal Remedies控えめな見積もりでも,米国国民の 12%以上がハーブ薬を使用しており,その数は増加しつつあることが示唆されている.しかしハーブ製品に対して,米国食品医薬品局による規制はなされていない.この総説では,イチョウ,サンザシ,ノコギリヤシ,セント・ジョーンズ・ワートに焦点を当てて,ハーブ薬の安全性と有効性に関するエビデンスを考察している.この 4 つのハーブは,評価するのに十分な件数の無作為化対照試験が行われている.
対照群を設定した研究による,ハーブ薬の使用を支持,あるいは異議を唱えるデータは依然として少ない.現在なされている主張を裏付けるには,より多くの研究が必要である.