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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

March 13, 2003
Vol. 348 No. 11

ORIGINAL ARTICLES

  • 小児のピーナッツアレルギー
    Peanut Allergy in Children

    ピーナッツアレルギーの有病率は上昇している.著者らは,アレルギーをもつ小児と対照小児を含む大規模コホートにおいて,ピーナッツアレルギーに関連する因子を調査した.ピーナッツアレルギーと,幼児期にピーナッツオイルを含む皮膚用製剤を使用することとのあいだに関連が認められた;豆乳または豆乳製品の摂取と,毛細管出血と痂皮形成を伴う発疹があることもまた,その後のピーナッツアレルギーの発症に関連していた.
    ピーナッツアレルギー増加の考えられる理由として,発疹を呈した幼児をピーナッツオイルを含む製品で治療したために,幼児がピーナッツに感作した可能性がある.これは仮説にすぎないが,検証できる説である.

  • ピーナッツアレルギーに対する抗 IgE 療法
    Anti-IgE Therapy for Peanut Allergy

    ピーナッツアレルギーは IgE を介する病態であり,適切な予防法はない;この反応は致死的となる可能性がある.この試験では,ヒト化抗 IgE モノクローナル抗体である TNX-901 が,ピーナッツアレルギー患者の耐性閾値を変えることができるかどうかを評価した.患者は,3 段階の用量の TNX-901 またはプラセボの投与を受けた.最高用量の抗体の投与を受けた患者では,感受性閾値が有意に増加した.TNX-901 は忍容性が高かった.
    TNX-901 の定期的な注射は,不慮のピーナッツ摂取に対する予防となる可能性がある;一般的使用の認可には,追加研究が必要であろう.

  • 慢性骨髄性白血病におけるイマチニブとインターフェロン+シタラビンの比較
    Interferon and Cytarabine Compared with Imatinib for Chronic Myeloid Leukemia

    慢性骨髄性白血病におけるイマチニブとインターフェロン+シタラビンの比較

    イマチニブは,慢性骨髄性白血病(CML)を引き起すチロシンキナーゼ変異体の阻害剤であるが,標準治療薬であるインターフェロンα に反応しない慢性期 CML 患者に対して有効である.慢性期 CML の治療歴がない患者 1,106 例を対象としたこの研究では,初回治療として,イマチニブはインターフェロンα +シタラビンの併用よりも優れていた.
    これらの結果により,インターフェロンαが忍容性の高いイマチニブに置き換わり,標準的治療法が変わるかもしれない.それでも,「イマチニブで CML における骨髄移植の必要性が減るのか?」「薬剤抵抗性の発生頻度はどの程度か?」「イマチニブは白血病を根治できるのか?」といった疑問が残る.

  • カルチノイド心疾患
    Carcinoid Heart Disease

    カルチノイド腫瘍は,心臓弁に毒性作用をもつ可能性のある,セロトニンなどの血管作動性物質を放出する.右心系の弁はとくに脆弱である.この研究では,心臓弁膜疾患の進行は,尿中 5-ヒドロキシインドール酢酸(セロトニン代謝産物)の最高値がより高いことと,細胞毒性化学療法による治療と関連していた.
    この研究で確認されたメカニズムではないが,細胞毒性化学療法が,セロトニンの大放出を引き起し,それにより患者が進行性心臓弁膜疾患にかかりやすくなるのかもしれない.したがってこの知見は,管理に影響を与える可能性がある.

SPECIAL ARTICLE

  • Shattuck 講演 ― 免疫レパートリーの多様性と免疫制御
    Shattuck Lecture - Diversity of the Immune Repertoire and Immunoregulation

    1890 年以来マサチューセッツ医学会は,年次総会での Shattuck 講演を後援している.2002 年度の講演者である Robert S. Schwartz 博士は,ついには臨床医療を変えた基礎免疫学における進歩について論じ,その進歩が大量に生み出した新しい治療法について簡潔にまとめている.

CLINICAL PRACTICE

  • 前庭神経炎
    Vestibular Neuritis

    53 歳の男性は,朝起きたときに急にめまいがした.男性はよろめきながらトイレにいき,繰り返し嘔吐した.12 時間後に地域の救急診療部を受診したところ,すべての眼位で左向きの眼振がみられたが,それ以外には問題となる神経学的所見はみられなかった.この患者をどのように評価し,治療すべきであろうか?

HEALTH POLICY REPORT

  • 有害事象の理解と対応
    Understanding and Responding to Adverse Events

    この論文では,有害事象を調査し,学習する方法を述べている.入念な調査とシステム分析により,医療過誤の発端となる要因を同定することができる.有害事象を理解する過程がケアを改善し,過誤を減少させること,そして医療事故に対する無神経で不適切な対応が,患者や家族にさらに被害をもたらす可能性があることを著者は主張している.著者は,有害事象に起因する心的外傷を最小限に抑える実際的な方法についても概説している.