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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

August 5, 2004
Vol. 351 No. 6

ORIGINAL ARTICLES

  • 薬剤抵抗性急性リンパ芽球性白血病細胞の遺伝子発現パターンと治療への反応
    Gene-Expression Patterns in Drug-Resistant Acute Lymphoblastic Leukemia Cells and Response to Treatment

    薬剤抵抗性急性リンパ芽球性白血病細胞の遺伝子発現パターンと治療への反応

    小児の急性リンパ芽球性白血病の治療に用いられる 4 種類の薬剤,プレドニゾロン,ビンクリスチン,アスパラギナーゼ,ダウノルビシンに抵抗性や感受性を示す白血病細胞の研究において,124 の遺伝子が抵抗性や感受性と関連付けられた.抵抗性遺伝子の発現パターンは,治療転帰と独立して関連性を示した.
    この研究結果は,小児白血病の予後予測に新たな要素を加え,化学療法への抵抗性に関して,幅広い取り組みを促すものと考えられる.

  • RALES 発表後の高カリウム血症の発症率
    Rates of Hyperkalemia after the Publication of RALES

    無作為アルダクトン評価試験(RALES)で,スピロノラクトンにより重症心不全患者の死亡率が減少することが示された.しかし,スピロノラクトンは,とくにアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と併用した場合,高カリウム血症を引き起す可能性がある.この研究では,ACE 阻害薬の投与を受けていた心不全患者において,RALES の発表後,スピロノラクトンの処方率と,高カリウム血症に関連した罹患率・死亡率が急増したことが明らかになった.
    スピロノラクトン療法中は,血清カリウム濃度と腎機能をモニタリングすることが重要である.

  • 急性 T 細胞性リンパ芽球性白血病における Smad3 の欠失
    Loss of Smad3 in Acute T-Cell Lymphoblastic Leukemia

    急性 T 細胞性リンパ芽球性白血病における Smad3 の欠失

    シグナル伝達分子 Smad3 は,腫瘍抑制因子であるトランスフォーミング増殖因子 β が細胞表面の受容体に結合して起るカスケードにおいて重要な役割を果す.今回報告された重要な結果は,T 細胞性急性リンパ芽球性白血病の小児から採取した悪性細胞では Smad3 が欠失していたことである.この新しい知見は,Smad3 を腫瘍抑制分子リストに加え,小児白血病の背後に潜む機序を見直すものである.

  • 喘息における C/EBPα とグルココルチコイド受容体
    C/EBPα and the Glucocorticoid Receptor in Asthma

    気道平滑筋細胞の増殖は,正常時には,グルココルチコイド受容体および CCAAT/エンハンサー結合蛋白α(C/EBPα)が介するグルココルチコイドの増殖抑制作用により抑制されている.今回の研究者らは,喘息患者の気道平滑筋では C/EBPα が選択的に欠損しており,このためグルココルチコイドの増殖抑制作用がなくなっていることを示している.
    これらのデータから,喘息患者の気道平滑筋は,健常被験者や肺気腫患者のものとは本質的に異なることが示唆される.この研究は,喘息の病理生物学の焦点を,気道の免疫学から平滑筋の生物学へと移すものである.

SPECIAL ARTICLE

  • 黒人と白人を治療するプライマリケア医の特徴
    Characteristics of Primary Care Doctors Who Treat Blacks and Whites

    メディケア患者とプライマリケア医に関するこの研究では,黒人患者の受診の 80%を,22%の医師が占めていた.黒人患者を治療する医師は,白人患者を治療する医師と比較して,認定医である割合が低く(77% 対 86%,P=0.02),すべての患者に質の高い医療を提供することはできないと報告している割合が高かった(28% 対 19%,P=0.005).
    黒人患者を治療する医師の質が低く,資源の利用ができないことが,保健医療の質における人種格差の一因となっている可能性がある.

CURRENT CONCEPTS

  • 高カリウム血症とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬
    Hyperkalemia and Inhibitors of the Renin–Angiotensin–Aldosterone System

    高カリウム血症は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体遮断薬による治療が原因で生じることがある.この副作用は,糖尿病,心不全,慢性腎疾患,高齢などのリスク因子を有する患者でもっともよくみられる.この総説では,病態生理学を解説し,管理のための臨床指針を提供している.

CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH

  • クルクミンと嚢胞性線維症
    Curcumin and Cystic Fibrosis

    嚢胞性線維症でもっともよくみられる突然変異では,変異した蛋白(塩素チャンネルを形成)が,通常の目的地である細胞表面へ到達するのが阻害される.最近の研究で,薬理活性をもつ栄養素であるクルクミンに,突然変異の影響を修正する可能性があることが示された.

CLINICAL PROBLEM-SOLVING

  • 悲惨な話
    A Bitter Tale

    悲惨な話

    53 歳の女性が,悪心と嘔吐が続き,救急外来のある病院を受診した.前日の夜,急に悪心があり,続いて嘔吐と眩暈が起った.また,女性は胸部と腹部に軽い不快感があると報告した.