- 目 次
-
This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
April 14, 2005
Vol. 352 No. 15
ORIGINAL ARTICLES
-
軽症持続型喘息に対する連日療法と頓用の比較
Daily versus As-Needed Therapy for Mild Persistent Asthma現在,軽症持続型喘息患者に対しては,長期管理薬を連日投与する治療が推奨されている.研究者らは,コルチコステロイドの吸入薬またはロイコトリエン受容体拮抗薬のいずれかを,連日投与する場合としない場合とで肺機能と喘息発作の回数を比較した.すべての患者は,喘息の症状が現れた場合,コルチコステロイドの吸入による治療を開始するよう指示された.朝の最大呼気流量や喘息の最初の悪化までの時間について,3 群間に有意差はみられなかった.
この試験は同等性を示すようデザインされていないが,これらのデータは,軽症持続型喘息患者において症状が現れた場合にのみ安全に治療できるかどうかを評価するための,大規模試験への基盤を築いている. -
急性前骨髄性白血病における DNA トポイソメラーゼ II
DNA Topoisomerase II in Acute Promyelocytic Leukemiaトポイソメラーゼ II 阻害薬ミトキサントロンによる癌の治療後に発症した急性前骨髄性白血病(APL)の症例において,染色体転座 t(15;17) 形成に関する研究が行われた.薬剤存在下では,トポイソメラーゼ II により DNA が損傷し,t(15;17) を生じうる切断点の集中する「ホットスポット」が形成された.
癌の化学療法で広く用いられている薬剤は,トポイソメラーゼ II による DNA 切断率を上昇させるか,あるいはトポイソメラーゼ II による一本鎖 DNA 2 本の再結合を減少させる.このような薬剤は,APL への感受性をも高める.この論文は,化学物質によるトポイソメラーゼ II への攻撃が,どのようにして APL に関わる遺伝子変化をもたらすかについて示している. -
心不全に対する心臓再同期療法の効果
Effect of Cardiac Resynchronization on Heart Failure心臓再同期療法により,伝導遅延に起因する左室収縮機能障害および心室同期不全をきたした患者において,左室機能と機能状態が改善される.薬物療法単独と薬物療法+心臓再同期療法の併用とを比較した無作為試験では,併用療法に関連して全死因死亡のリスクが有意に減少した.
-
ボストンマラソンの走者における低ナトリウム血症
Hyponatremia among Runners in the Boston Marathonマラソン中の低ナトリウム血症の発症は,ときに死を招く深刻な結果につながる可能性がある.2002 年ボストンマラソンの走者 488 人を対象としたこの研究では,13%に低ナトリウム血症がみられ,0.6%が重度の低ナトリウム血症(血清ナトリウム濃度 120 mmol/L 未満)であった.レース中の体重増加,長いレース時間,および極端な体格指数が,低ナトリウム血症と関連していた.体液バランスを監視し,調節するための取り組みを積極的に行うことにより,その大部分が予防可能である低ナトリウム血症の発症率を減少させられる可能性がある.
BRIEF REPORT
-
ヒトの難聴に対する遺伝子修飾因子
Genetic Modifier of Human Hearing Lossこの研究では,細胞膜カルシウムポンプ PMCA2 をコードする遺伝子の変異体が,別の遺伝子の変異に起因する難聴の重症度に関与することが明らかにされている.変異 PMCA2 対立遺伝子はヨーロッパ系の人の約 3~5%が保有しているが,この知見から,この対立遺伝子が老人性難聴と騒音性難聴のリスク因子であることが示唆される.この可能性を検討する研究が必要である.
DRUG THERAPY
-
抗マラリア薬の有効性
Effectiveness of Antimalarial Drugs予防に対する取り組みの失敗や,標準的な抗マラリア薬に対する耐性出現の結果,マラリアが再び世界的に流行している.新しい治療法も存在するが,社会的,経済的,臨床的な要因から,依然として従来の薬剤が使用されている.この総説では,マラリアの予防と治療に対する最近の取り組みについて考察している.
CLINICAL IMPLICATIONS OF BASIC RESEARCH
-
マウスにおけるマラリアワクチン
A Malaria Vaccine in the Mouse肝臓での Plasmodium berghei の生育に重要な遺伝子を除去すると,スポロゾイト――病原体の感染が起る段階――が変化し,ワクチンとして作用するようになる.
CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL
-
胎児に核型異常の認められた妊婦
Pregnant Woman with an Abnormal-Karyotype Fetus32 歳の妊婦が,胎児に核型異常が発見されたため,遺伝カウンセリングを求めた.妊娠 14 週での卵巣嚢胞の超音波検査による評価では,胎児項部の透過性が強く,羊水穿刺では胎児の 18 番染色体の短腕に余分な遺伝物質が認められた.母親は,先天異常の家族歴を思い起した.診断検査が行われ,今後の妊娠のために着床前遺伝子検査の役割について話し合われた.