突然死した冠動脈疾患男性における冠疾患の危険因子とプラーク形態
CORONARY RISK FACTORS AND PLAQUE MORPHOLOGY IN MEN WITH CORONARY DISEASE WHO DIED SUDDENLY
A.P. BURKE AND OTHERS
喫煙と血清コレステロール濃度異常は,急性冠症候群の危険因子であるが,基礎となるメカニズムはあまり解明されていない.われわれは,喫煙とコレステロール濃度異常が,易損性冠動脈プラーク(vulnerable coronary plaques)の破裂またはプラークのびらんのいずれかの結果生ずる急性冠動脈血栓症と突然死を早めるか否かを調べた.
突然死した冠動脈疾患の男性 113 人の心臓を調べるとともに,彼らの冠疾患の危険因子を分析した.男性 59 人ではそれぞれの心臓に急性冠動脈血栓を認め,急性血栓症の所見を示さないアテローム性動脈硬化性プラーク(安定なプラーク)による冠動脈の重度狭窄を 54 人に認めた.急性血栓症症例を 2 群に分けた:41 例は易損性のプラーク破裂が原因で起り(薄い線維性被膜が脂質に富むコアに重層しているもの),18 例は平滑筋細胞とプロテオグリカンに富む線維性プラークの侵食が原因で起っていた.それぞれの心臓について,破裂しなかった易損性プラークを計数した.
喫煙は,急性血栓症の男性 44 人(75%)において危険因子で,これに対し,安定なプラークを有する男性では 22 人(41%)であった(p<0.001).高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールに対する血清総コレステロールの平均(±SD)比は,プラーク破裂による急性血栓症のため死亡した男性では著しく上昇していたが(8.5±4.0),急性血栓症を示さない男性(5.5±2.4,p<0.001)およびびらん性プラークに重なった血栓を有する男性(5.0±1.8,p<0.001)では軽度に上昇したに過ぎなかった.多変量解析により,HDL コレステロールに対する血清総コレステロール比の上昇と易損傷性プラークの存在とのあいだに関連が示された(p<0.001).
突然死した冠動脈疾患男性では,血清コレステロール濃度異常 ― 特に HDL コレステロールに対する総コレステロールの比の上昇 ― によって易損性プラークが破裂しやすくなり,一方,喫煙によって患者は急性血栓症にかかりやすくなる.