香港における α および β サラセミア キャリアの割合および遺伝子型 ― 集団スクリーニングのもつ意味
PREVALENCE AND GENOTYPES OF α- AND β-THALASSEMIA CARRIERS IN HONG KONG — IMPLICATIONS FOR POPULATION SCREENING
Y.-L. LAU AND OTHERS
サラセミアは中国南部では一般的にみられる.われわれは,香港におけるこれらの遺伝的疾患のヘテロ接合キャリアの割合を求め,地域に基づくスクリーニングプログラム実施の可能性を査定した.
サラセミアに関する教育的スクリーニングプログラムを,3 ヵ所の高校で学生 2,420 人に実施した.学生の 75%が,血球数,ヘモグロビン電気泳動,血清中フェリチン測定,そして DNA 分析からなるスクリーニングを受けることに同意した.
調べた 1,800 血液サンプル中,150 サンプル(8.3%)が小球性(平均血球容積<80 μm3)であった.90 人(5.0%)が αサラセミアのキャリアで,このうち 81 人(4.5%)が,同じ 16 染色体上の α-グロビン遺伝子が双方とも欠失している南アジア型欠失のキャリアであった.61 人(3.4%)は,βサラセミアまたはヘモグロビン E をコードする変異のいずれかのキャリアであった.6 人は α および β 双方のサラセミアのキャリアであった.これらの数値に基づいて,胎児がホモ接合性の重症または中間型 αサラセミアおよび βサラセミアのリスクに曝されている香港での推定妊娠数はそれぞれ,年間 145 例および 80 例であった.香港では,これら疾患の出生前診断を目的に紹介される女性の実際の数はそれぞれ,おおよそ年間 95 例および 40 例である.
香港では,何年も前から病院でのスクリーニングと出生前診断が利用できるにもかかわらず,サラセミアのリスクを有する胎児を妊娠している多くの女性が,遺伝カウンセリングを受けていない.香港および中国南部では,地域に基づく教育,スクリーニング,カウンセリングプログラムが必要である.