February 6, 1997 Vol. 336 No. 6
第 V 因子遺伝子の Arg506 が Gln に変異した(第 V 因子ライデン)患者における静脈血栓塞栓症再発リスク
THE RISK OF RECURRENT VENOUS THROMBOEMBOLISM IN PATIENTS WITH AN Arg506→Gln MUTATION IN THE GENE FOR FACTOR V (FACTOR V LEIDEN)
P. SIMIONI AND OTHERS
最近発見された凝固第 V 因子の変異(Arg506→Gln,第 V 因子ライデンと呼ばれる)は,活性化プロテイン C に対する耐性を生じさせるもので,静脈血栓塞栓症患者の約 1/5 に認められる.しかし,この遺伝子異常のへテロ接合体保有者における血栓塞栓症再発リスクは不明である.
静脈造影で診断された,症候性深部静脈血栓症の初回エピソード患者から抽出した 251 人において,第 V 因子ライデンを探索した.これらの患者を前向きに平均 3.9 年間追跡し,静脈血栓症の再発率と肺動脈塞栓症の発症率を求めた.
41 人に第 V 因子ライデンを認めた(16.3%,95%信頼区間,11.8~20.9%).最長 8 年間の追跡後の静脈血栓塞栓症の累積再発率は,変異保有者では 39.7%(95%信頼区間,22.8~56.5%)であったのに対し,変異を有しない患者では 18.3%(95%信頼区間,12.3~24.3%)であった(ハザード比,2.4;95%信頼区間,1.3~4.5;p<0.01).
血栓塞栓症イベント再発のリスクは,第 V 因子ライデン保有者ではこの異常を有しない患者よりも有意に高い.この変異を有する静脈血栓塞栓症の初回エピソード患者において,長期抗凝固療法のリスク/利益比を評価する大規模臨床試験の必要性が示唆される.