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March 20, 1997 Vol. 336 No. 12

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急性尿細管壊死におけるアナリチド
ANARITIDE IN ACUTE TUBULAR NECROSIS

R.L. ALLGREN AND OTHERS

背景

心房性ナトリウム利尿性ペプチドは,心房で合成されるホルモンで,糸球体輸出細動脈を収縮させながら輸入細動脈を拡張させることによって,糸球体濾過率を増加させる.このペプチドは,急性腎機能障害の実験動物において,糸球体濾過,尿量,そして腎組織学的病理所見を改善することが示されている.アナリチドは,心房性ナトリウム利尿性ペプチドの 25 個のアミノ酸からなる合成型である.

方 法

急性尿細管壊死を起こした重症患者 504 人について,アナリチドに関する多施設無作為二重盲検プラセボ比較臨床試験を実施した.患者に,アナリチド(0.2 μg/kg 体重/分)またはプラセボのいずれかを 24 時間静脈内に注入した.主要エンドポイントは処置後 21 日間無透析生存率とした.その他のエンドポイントは,透析の必要性,血清中クレアチニン濃度の変化,死亡率などとした.

結 果

無透析生存率はプラセボ群では 47%,アナリチド群では 43%であった(p=0.35).前向きに定義した乏尿(尿量,<400 mL/日)の患者 120 人のサブグループでは,無透析生存率はプラセボ群で 8%(60 人中 5 人),アナリチド群では 27%(60 人中 16 人,p=0.008)であった.アナリチド群で,治療後乏尿が改善した乏尿の患者がもっとも利益を得た.逆に,乏尿でない患者 378 人では,無透析生存率はプラセボ群で 59%(195 人中 116 人),アナリチド群で 48%(183 人中 88 人,p=0.03)であった.

結 論

急性尿細管壊死を起こした重症患者では,アナリチドを投与しても,総合的な無透析生存率は改善しなかった.しかし,アナリチドは,乏尿のある急性尿細管壊死患者では無透析生存率を改善するが,乏尿ではない急性尿細管壊死患者ではこれを悪化させる可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1997; 336 : 828 - 34. )