多中心性カポジ肉腫病変のモノクローン起源
MONOCLONAL ORIGIN OF MULTICENTRIC KAPOSI'S SARCOMA LESIONS
C.S. RABKIN AND OTHERS
カポジ肉腫は,過形成的増殖と新生物的増殖という二つの特徴を有する.多発性病変では,紡錘型細胞が多く,広く分散した領域にわたってしばしば同時に発生している.われわれは,これらの多中心病変における紡錘型細胞が前駆細胞の単一クローンに由来するという仮説を調べた.
カポジ肉腫がモノクローン疾患であるか否かを明らかにするため,後天性免疫不全症候群(AIDS)の女性の多発病変におけるアンドロゲン受容体遺伝子(HUMARA)のメチル化パターンを評価した.多クローン組織では,各 HUMARA 対立遺伝子のコピーの約半数がメチル化されているが,単一クローンに由来する細胞では 1 対立遺伝子のコピーすべてがメチル化されている.正常 DNA の混入を最小限にとどめるため,マイクロダイセクション法を用いて主に腫瘍細胞と推定される紡錘型細胞からなる領域を単離した.
32 個の腫瘍を有する患者 8 人を調べた.これらの腫瘍のうち,28 個は非常にアンバランスなメチル化パターンを示した(すなわち,一つの HUMARA 対立遺伝子の優勢なメチル化).この患者のアンバランスなメチル化を示す腫瘍すべてについて,同じ対立遺伝子が優勢であった.
これらのデータは,カポジ肉腫が播種性モノクローン癌であり,紡錘型細胞のクローン的増殖を許す変化が疾患が拡がる前に起っていることを示している.