ヒト免疫不全ウイルス感染症に関連した進行性多巣性白質脳症にシタラビンは無効
FAILURE OF CYTARABINE IN PROGRESSIVE MULTIFOCAL LEUKOENCEPHALOPATHY ASSOCIATED WITH HUMAN IMMUNODEFICIENCY VIRUS INFECTION
C.D. HALL AND OTHERS
進行性多巣性白質脳症は,後天性免疫不全症候群(AIDS)患者の約 4%が罹患し,白質脳症と診断された後の生存期間は平均わずか 3 ヵ月である.抗レトロウイルス薬にシタラビンの静脈内または髄腔内投与を併用する療法は,改善の報告はあるものの根拠に乏しく,対照試験は行われていない.
多施設共同試験において,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染と,生検で確認した進行性多巣性白質脳症を有する患者 57 人を無作為割付けして,三つの治療のいずれかを行った:抗レトロウイルス療法単独,抗レトロウイルス療法+シタラビン静注,または抗レトロウイルス療法+シタラビン髄腔内投与.1~2 週間の導入期間の後,積極的治療を 24 週間行った.大部分の患者では,抗レトロウイルス療法はジドブジンと,ジダノシンまたはスタブジンから構成された.
最終解析の時点で,各治療群 14 人が死亡しており,3 群の生存に有意差を認めなかった(log-rank 検定で p=0.85).生存期間の中央値(抗レトロウイルス療法単独群 11 週,シタラビン静脈内投与群 8 週,髄腔内投与群 15 週)は,先行試験と同程度であった.24 週の治療を完了したのはわずか 7 人であった.抗レトロウイルス療法にシタラビン静注を併用した患者では,貧血と血小板減少症の頻度がほかの群よりも高かった.
われわれが使用している抗レトロウイルス薬で治療中の進行性多巣性白質脳症の HIV 感染患者に,シタラビンの静脈内または髄腔内投与を追加しても予後が改善することはなく,また高用量の抗レトロウイルス療法のみで治療しても,無治療患者で報告されている生存を上回る生存は得られないと思われる.