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November 19, 1998 Vol. 339 No. 21

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無症候性劣性難聴を有するアシュケナジユダヤ人におけるコネキシン 26 遺伝子(GJB2)変異
MUTATION IN THE CONNEXIN 26 GENE(GJB2)AMONG ASHKENAZI JEWS WITH NONSYNDROMIC RECESSIVE DEAFNESS

R.J. MORELL AND OTHERS

背景

GJB2 遺伝子変異は,一つの型の無症候性劣性難聴を引き起す.地中海沿岸のヨーロッパ人では,無症候性劣性難聴の症例の 80%以上が GJB2 の 30delG 変異対立遺伝子の遺伝に起因する.われわれは,アシュケナジユダヤ人におけるこの疾患の発生率に対する GJB2 変異の関与を評価した.

方 法

無症候性劣性難聴を有するアシュケナジユダヤ人の三つの家系,その他の病態に対する保因者であるか否かを調べたアシュケナジユダヤ人,およびその他の民族グループのメンバーからの DNA サンプルにおける GJB2 変異の有無を調べた.GJB2 変異に関してヘテロ接合である人の聴力を,純音聴力検査,中耳イミタンスの測定,および耳聴覚放射の記録を用いて評価した.

結 果

無症候性劣性難聴の家系では,GJB2 における二つのフレームシフト変異,167delT と 30delG を認めた.167delT をヘテロ接合体で保有する割合は,一般集団ではまれであるが,アシュケナジユダヤ人集団では 4.03%(95%信頼区間,2.5~6.0%),30delG をヘテロ接合体で保有する割合は 0.73%(95%信頼区間,0.2~1.8%)であった.遺伝子連鎖分析により,167delT のハプロタイプは保存されているが,30delG に関してはいくつかのハプロタイプが存在することが示された.聴力が正常な変異対立遺伝子の保因者の聴力検査により,その耳聴覚放射には微妙な差があることが明らかになり,GJB2 における変異の発現は半優性である可能性があることが示唆された.

結 論

GJB2 変異の保因者の割合が高いこと(4.76%)は,難聴の人が 1,765 人に 1 人発生することを予測し,これはアシュケナジユダヤ人集団における無症候性劣性難聴の症例の大多数の説明となるだろう.167delT 変異に隣接するハプロタイプが保存されることはこの対立遺伝子が単一の起源を有することを示唆するが,30delG 変異を有するハプロタイプが多数存在することは,この部位が再発性変異の中心部であることを示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1998; 339 : 1500 - 5. )