1981~97 年の米国におけるライ症候群
Reye's Syndrome in the United States from 1981 through 1997
E.D. BELAY AND OTHERS
ライ症候群は,脳症と肝臓の脂肪変性を特徴とする疾患で,通常はインフルエンザや水痘などに引き続いて発症する.1980 年に,ライ症候群のリスクのために,これらのウイルス感染症の小児に対するサリチル酸塩の使用についての警告がだされ始めた.
米国のライ症候群のパターン,患者の特性,および不良な転帰の危険因子を明らかにするために,1980 年 12 月~1997 年 11 月までに収集された全国調査のデータの解析を行った.この調査の方式は,標準的な症例記録用紙(CRF)を使用した自発的な報告に基づいたものである.
1980 年 12 月~1997 年 11 月(調査年度は 1981~1997 年度)までに,18 歳未満の患者について,1,207 例のライ症候群患者の報告があった.人種および性別のデータが入手できた患者については,その 93%が白人,52%が少女であった.報告されたライ症候群の患者数は,ライ症候群とアスピリンとの関連性が発表されたあとに急激に減少した.報告された小児の患者数は 1980 年に 555 例と最高値であったのち,1987 年以降は,年間の患者数が 36 例を超えることはなかった.先行疾病はデータが入手できた小児の 93%で報告され,サリチル酸塩の血中濃度はデータが得られた小児の 82%で検出可能な値であった.転帰のデータが得られた患者全体の致死率は 31%であった.患者の致死率は,5 歳未満の小児(相対危険度,1.8;95%信頼区間,1.5~2.1),および血清中のアンモニア濃度が 45 μg/dL(26 μmol/L)を超えていた小児(相対危険度,3.4;95%信頼区間,1.9~6.2)でもっとも高かった.
ライ症候群と水痘またはインフルエンザ様疾病発症中のアスピリンの使用との関連性が最初に発表された 1980 年以降,ライ症候群として報告された乳幼児および小児の患者数は急激に減少している.現在では,ライ症候群は非常にまれな疾患であるので,この疾患が疑われる乳幼児や小児に対しては,ライ症候群に類似することのある治療可能な先天性の代謝性疾患の可能性を鑑別するために,広範囲の検査を実施すべきである.