病院の治療規模と高齢患者の急性心筋梗塞後の生存との関連
The Association Between Hospital Volume and Survival after Acute Myocardial Infarction in Elderly Patients
D.R. THIEMANN, J. CORESH, W.J. OETGEN, AND N.R. POWE
急性の冠動脈虚血によると考えられる胸痛の患者は,一般的には,救急車で最寄りの病院に搬送される.しかしながら,数多くの心筋梗塞患者を治療している病院に直接搬送することの潜在的な有益性は分かっていない.
65 歳以上の 98,898 例のメディケア(老齢者医療保障制度)患者を対象として,本研究に参加した各病院で治療された心筋梗塞のメディケア患者の患者数(病院の治療患者数)と,長期生存との関連について,後ろ向きのコホート研究を行った.侵襲的な治療手技の利用可能性,主治医の専門,および患者の居住地域(田舎,都市,または大都会)などといった臨床的,人口統計学的,および保健制度に関する変数を補正するために,比例ハザードの手法を用いた.
対象疾患の最少四分位規模の病院に搬送された患者は,最大四分位規模の病院に搬送された患者と比べて,入院後 30 日目までに死亡する確率が 17%高かったが(ハザード比,1.17;95%信頼区間,1.09~1.26;p < 0.001),これは,患者 100 例当り 2.3 例の死亡の増加に相当した.1 年目までの粗死亡率は,最少規模の病院に入院した患者では 29.8%であったのに対して,最大規模の病院に入院した患者では 27.0%であった.病院の治療規模と死亡のリスクとのあいだには,治療患者数が増加するほど死亡リスクが連続的に低下するという逆の用量反関係が認められた.年齢,心疾患の病歴,梗塞の Killip 分類,血栓溶解療法に対する禁忌の有無,および症状が発現してからの時間によって患者を層別した部分集団の解析では,患者の生存は,小規模病院よりも大規模病院がつねに優れていた.血管形成術とバイパス術の治療手技の利用可能性と全死亡率とのあいだには,他の影響を受けない独立した関連性は認められなかった.
心筋梗塞の治療経験を治療患者数で評価すると,治療経験が豊富な病院に直接入院した急性心筋梗塞の患者は,その治療患者数が少ない病院に入院した患者よりも生存の確率が高い.