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June 3, 1999 Vol. 340 No. 22

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妊娠女性における肝疾患の病因としての胎児の脂肪酸酸化障害
A Fetal Fatty-Acid Oxidation Disorder as a Cause of Liver Disease in Pregnant Women

J.A. IBDAH AND OTHERS

背景

急性の妊娠脂肪肝と HELLP 症候群(溶血,肝酵素の上昇,および血小板減少)は,その胎児が,後に長鎖 3-ヒドロキシアシル CoA デヒドロゲナーゼ欠損症と判明した女性で妊娠中に発症する可能性のある重篤な肝疾患である.この酵素は,ミトコンドリア三頭酵素(TFP)に存在しているが,TFP は,長鎖の 2,3-エノイル-CoA ヒドラターゼと長鎖の 3-ケトアシル-CoA チオラーゼの活性部位も有している.そこで,われわれは,脂肪酸酸化障害をもった乳幼児における TFP の突然変異と,それらの母親の妊娠中の急性肝疾患との関連を調べるために,本研究を実施した.

方 法

3-ヒドロキシアシル-CoA デヒドロゲナーゼ欠損症の乳幼児 24 例において,DNA の増幅とヌクレオチド配列の分析を用いて,TFP のαサブユニットの突然変異を同定した.そして,この結果と,それらの母親における妊娠中の肝疾患発症との関連性を検討した.

結 果

19 例は,長鎖の 3-ヒドロキシアシル-CoA デヒドロゲナーゼの単独欠損症で,低ケトン性低血糖症と脂肪肝を発症していた.このうち 8 例で,474 残基のグルタミン酸がグルタミンに変化しているホモ接合の突然変異が同定された.残りの 11 例は複合ヘテロ接合体で,この突然変異がαサブユニット遺伝子の対立遺伝子の一方に,これとは別の突然変異がもう一方の対立遺伝子にあった.ヘテロ接合の母親の 79%が,Glu474Gln の突然変異を有する胎児を妊娠中に,妊娠脂肪肝または HELLP 症候群を発症していた.そのほかの 5 例は,新生児拡張型心筋症または進行性ニューロミオパシーを発症しており,TFP の完全欠損症であった(三つのすべての酵素の活性を喪失).しかし Glu474Gln の突然変異を有する児はおらず,またいずれの母親も,妊娠中に肝疾患を発症しなかった.

結 論

妊娠中に急性の肝疾患を発症した女性は,長鎖基質に特異的なヒドロキシアシル-CoA デヒドロゲナーゼに,Glu474Gln の突然変異が起こっている可能性がある.その児には,低ケトン性低血糖症と脂肪肝のリスクがある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 1723 - 31. )