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January 21, 1999 Vol. 340 No. 3

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選択的ニューロキニン-1 受容体拮抗薬によるシスプラチン誘発性嘔吐の軽減
REDUCTION OF CISPLATIN-INDUCED EMESIS BY A SELECTIVE NEUROKININ-1–RECEPTOR ANTAGONIST

R.M. NAVARI AND OTHERS

背景

嘔吐に関連している脳幹部位へのサブスタンス P の局在化と,フェレットの試験結果から,われわれは,ニューロキニン-1 受容体拮抗薬が抗癌化学療法を受けている患者の制吐薬になるのではないかということを仮定した.

方 法

シスプラチン未治療の 159 例の患者を組み入れた多施設の二重盲検プラセボ対照試験において,シスプラチンの単回投与療法(体表面積換算で 70 mg/m2 以上)後の急性嘔吐(24 時間以内の発現)と遅延性嘔吐(投与 2~5 日目の発現)の予防に関する評価を行った.シスプラチンの投与前に,患者の全例に対してグラニセトロン(体重換算で 10 μg/kg の静脈内投与)とデキサメタゾン(20 mg の経口投与)の投与を行った.患者は,グラニセトロンとデキサメタゾンの投与に加えて,3 種類の治療の中の一つに無作為に割り付けられた:すなわち,シスプラチンの投与前に三つの基が置換された経口用モルホリン アセタール(L-754,030 としても知られている)の 400 mg,およびシスプラチンの投与 2~5 日目にその 300 mg を投与する治療(第 1群),シスプラチン投与前に L-754,030 の 400 mg および投与 2~5 日目にプラセボを投与する治療(第 2 群),あるいはシスプラチン投与前および投与 2~5 日目にプラセボを投与する治療(第 3 群).嘔吐または悪心が発現した時の治療においては,いつでも薬物治療を追加して行うことが可能であった.

結 果

急性嘔吐期には,第 1 群と第 2 群を合わせた患者の 93%および第 3 群の患者の 67%で,嘔吐の発現は認められなかった(p<0.001).遅延性嘔吐期には,第 1 群の患者の 82%,第 2 群の患者の 78%,第 3 群の患者の 33%で嘔吐は発現しなかった(第 1 群と第 3 群との比較または第 2 群と第 3 群との比較で p<0.001).遅延性嘔吐期の悪心スコアの中央値は,第 3 群よりも第 1 群で有意に低かった(p=0.003).L-754,030 が原因となって発現した重篤な有害イベントはまったくなかった.

結 論

ニューロキニン-1 受容体拮抗薬である L-754,030 は,シスプラチン治療後の遅延性嘔吐を予防する.さらに,L-754,030 のグラニセトロンとデキサメタゾンとの併用は,急性嘔吐の予防効果を改善させる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 190 - 5. )