January 28, 1999 Vol. 340 No. 4
急性中耳炎発症時の中耳における種々の呼吸器ウイルスの保有率
PREVALENCE OF VARIOUS RESPIRATORY VIRUSES IN THE MIDDLE EAR DURING ACUTE OTITIS MEDIA
T. HEIKKINEN, M. THINT, AND T. CHONMAITREE
呼吸器ウイルスに対するワクチンは,急性中耳炎の発症頻度を低下させうる可能性がある.急性中耳炎の病因における呼吸器ウイルスの役割は充分に確立されているものの,種々のウイルスの相対的な重要性はわかっていない.
われわれは,急性中耳炎の 456 例の小児(年齢,生後 2 ヵ月~7 歳)に対して,各種の呼吸器ウイルスの有無について中耳腔液検査を行った.ウイルスと細菌の培養およびウイルス抗原の検出検査のために,試験登録時と抗生剤療法を開始した 2~5 日後に中耳腔液と鼻の洗浄液の検体を採取した.感染症とウイルスとの因果関係についても,急性病態期と回復期に採取した血清検体の血清学的検査によって評価した.
呼吸器感染症と特定のウイルスとの因果関係は,456 例の小児の中の 186 例(41%)で確定された.中耳腔液で同定されたもっとも一般的なウイルスは RS ウイルス(Pneumovirus 属の RNA ウイルス)であった:このウイルスは,これに感染していた 65 例中 48 例(74%)の小児の中耳腔液から検出された(他のウイルスとの比較で p≦0.04).中耳腔液中には,パラインフルエンザウイルス(29 例の小児の中の 15例 [52%])とインフルエンザウイルス(24 例中の 10 例 [42%])が,エンテロウイルス(27 例中の 3 例 [11%])あるいはアデノウイルス(23 例中の 1 例 [4%])よりも有意に多く検出された(すべてのウイルスとの比較で p≦0.01).
急性中耳炎発症時の中耳に侵入している主なウイルスは RS ウイルスである.したがって,RS ウイルスによって引き起される上気道感染症に対する有効なワクチンによって,小児における急性中耳炎の発症を減少させられるかもしれない.