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March 11, 1999 Vol. 340 No. 10

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パーキンソン病における薬物性精神病の治療のための低用量クロザピン
Low-Dose Clozapine for the Treatment of Drug-Induced Psychosis in Parkinson's Disease

THE PARKINSON STUDY GROUP

背景

薬物性精神病は,パーキンソン病患者において管理しなければならないむずかしい問題の一つである.オープンラベルの多施設共同試験において,クロザピンの低用量治療が パーキンソニズムを悪化させることなく精神病を軽快させることが報告されている.

方 法

60 例の患者を対象としたクロザピンの低用量(6.25~50 mg/日)のプラセボを対照とした無作為二重盲検比較試験を,6 施設において 14 ヵ月にわたって実施した.対象患者(平均年齢,72 歳)は,原発性パーキンソン病の患者で,薬物性精神病が少なくとも 4 週間にわたって発現していた患者であった.すべての患者に対して,試験期間の 4 週のあいだ,抗パーキンソン病薬の固定用量の投与が継続された.患者全例の血球数を毎週測定して,その変動を監視した.

結 果

クロザピンの平均投与量は 24.7 mg/日であった.精神病の重症度判定に用いた三つのすべての測定項目において,クロザピン群の患者は,プラセボ群の患者よりも有意に大きな改善が得られた.「臨床全般印象尺度」(CGIS:the Clinical Global Impression Scale)の平均スコア(±SE)は,クロザピン投与患者では 1.6±0.3 ポイント改善したのに対して,プラセボ投与患者では 0.5±0.2 ポイント改善しただけであった(p < 0.001).「簡易精神症状評価尺度」(BPRS:the Brief Psychiatric Rating Scale)のスコアは,クロザピン投与患者では 9.3±1.5 ポイント改善したのに対して,プラセボ投与患者では 2.6±1.3 ポイント改善しただけであった(p = 0.002).「陽性症状評価尺度」(SAPS:the Scale for the Assessment of Positive Symptoms)のスコアは,クロザピン投与患者では 11.8±2.0 ポイント改善したのに対して,プラセボ投与患者では 3.8±1.9 ポイント改善しただけであった(p = 0.01).7 段階評価の「臨床全般印象尺度」(または CGIS)で 3 段階以上の改善が認められたのは,クロザピンの治療を受けた患者では 7 例であったのに対して,プラセボの投与を受けた患者は 1 例だけであった.クロザピンの治療は振戦を改善させ,しかもパーキンソニズムの重症度には何の悪影響も及ぼさなかった.また,1 例の患者では白血球減少のためにクロザピンの投与が中止された.

結 論

クロザピンは,50 mg 以下の 1 日用量で,安全であり,しかもパーキンソニズムを悪化させることなく薬物性精神病を有意に改善させる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 340 : 757 - 63. )