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October 14, 1999 Vol. 341 No. 16

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完全型ディジョージ症候群における胸腺組織の移植
Transplantation of Thymus Tissue in Complete DiGeorge Syndrome

M.L. MARKERT AND OTHERS

背景

ディジョージ症候群は,心臓,副甲状腺,および胸腺が侵される先天性疾患である.完全型ディジョージ症候群の患者では,その T 細胞の機能が高度に低下している.

方 法

今回,われわれは,完全型ディジョージ症候群の乳幼児 5 例(年齢,生後 1~4 ヵ月)に,新生児から採取して培養した胸腺組織を移植する治療を行った.追跡調査の評価は,免疫表現型のタイピングと,末梢血単核細胞の増殖試験に胸腺の同種移植片の生検を加えた.胸腺における新しい T 細胞の産生は,末梢血を用いて,T 細胞受容体の組換え除去環状 DNA 検査にて評価した.この環状 DNA は,T 細胞受容体の遺伝子の再構成中に切り出されて除去された DNA で形成される.

結 果

マイトジェンに刺激されて起る T 細胞の増殖反応は,胸腺組織の移植後には,5 例の患者のうちの 4 例に認められた.これらの患者のうちの 2 例は,免疫機能の回復によって生存することができた;残りの 3 例の患者は,移植とは無関係の感染症あるいは異常によって死亡した.生存患者の移植された胸腺の生検からは,その形態学的状態が正常であること,および T 細胞が活発に産生されていることが示された.3 例の患者では,移植後約 4 週間目にドナーの T 細胞を検出することができたが,生検あるいは剖検では移植片対宿主病を示すような所見は何も認められなかった.1 例の患者では,移植片での T 細胞の分化は,成熟して間もない T 細胞の末梢への出現を伴って起ることが証明され,正常な T 細胞機能の発現の開始とも一致していた.また,もう 1 例では,移植後 5 年を過ぎても胸腺機能と CD45RA+CD62L+ T 細胞が保たれていることを示す結果が得られた.

結 論

高度の免疫不全がある完全型ディジョージ症候群の乳幼児のなかには,胸腺組織の移植によって免疫機能が正常にもどることがある.そして,早期の胸腺移植 ―感染症の合併の発症前― が,免疫の再構築の成功を促す可能性がある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 1999; 341 : 1180 - 9. )