母体の血漿中ヒト免疫不全ウイルス 1 型の RNA 量と周産期伝播のリスク
Maternal Levels of Plasma Human Immunodeficiency Virus Type 1 RNA and the Risk of Perinatal Transmission
P.M. GARCIA AND OTHERS
妊娠女性における血漿中のヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)の RNA 量の重要性については,その新生児への感染の伝播リスクに影響することが知られている他の因子との関連において,完全には明かにされていない.そこで,われわれは,母性の血漿中の HIV-1 RNA 量と,周産期伝播のリスクおよび伝播の時期との関連性を検討した.
単胎妊娠の HIV-1 感染症の女性 552 例に対して,血漿中の RNA 量を連続的に測定した.これら女性の新生児における感染状態は,血液培養によって評価し,さらに感染の時期を早期(生後 2 日目までに採血した血液培養が陽性の場合)あるいは晩期(生後 7 日目までに採血した血液培養が陰性であったが,これ以降の培養が陽性であった場合)に分類した.母性の血漿中の HIV-1 RNA 量ごとの伝播率は,層別およびロジスティック回帰による共変量の補正を行った上で,傾向性検定によって解析した.
血漿中の HIV-1 RNA 量の幾何平均値の上昇は,伝播率の上昇と関連していた:すなわち,伝播率は,1,000 コピー/mL 未満の女性では 0%(57 例中 0 例),1,000~10,000 コピー/mL の女性では 16.6%(193 例中 32 例),10,001~50,000 コピー/mL の女性では 21.3%(183 例中 39 例),50,001~100,000 コピー/mL の女性では 30.9%(54 例中 17 例),100,000 コピー/mL を超える女性では 40.6%(64 例中 26 例,p < 0.001)であった.治療状態は 1 例で不明であった.伝播率は,血漿中の HIV-1 RNA 量が 100,000 コピー/mL を超えていて,ジドブジン投与を受けていなかった女性でもっとも高かった(30 例中 19 例,63.3%).HIV-1 RNA 量の妊娠初期の増加と妊娠後期の増加のどちらも,新生児への感染の時期との関連は認められなかった.
HIV-1 に感染している妊娠女性では,血漿中の HIV-1 RNA 量によって,その新生児への HIV-1 の伝播のリスクが予測できるが,その伝播時期については予測できない.