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April 27, 2000 Vol. 342 No. 17

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ある糖尿病の小児における壊死性腸炎(ピッグベル)
Enteritis Necroticans (Pigbel) in a Diabetic Child

T.M. PETRILLO AND OTHERS

背景

壊死性腸炎(ピッグベル)は,発展途上国でみられる,空腸の出血性,炎症性,または虚血性の壊死を特徴とする,死に至ることの多い疾患であるが,先進国では慢性疾患の成人のみにみられるまれな疾患である.壊死性腸炎の原因菌は,嫌気性グラム陽性桿菌である Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)の C 型である.

方 法

1998 年 12 月に,12 歳のコントロール不良の糖尿病の男児が,豚の腸(チタリングス:豚の小腸を煮込んだり揚げたりしたもの)を食べた後に壊死性腸炎を発症した.男児が搬送されてきたときには,吐血,腹部膨満,および低血圧を伴った重症の糖尿病性ケトアシドーシスが発現していた.開腹術で認められた広範囲の空腸の壊死には,腸切除,空腸切除,および回腸造瘻が必要であった.組織病理学検査のための組織標本を採取した.パラフィン埋包の腸組織に,C. perfringens によって産生される α毒素,β毒素をコードする cpacpb 遺伝子に特異的なプライマーを用いて,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による分析を行った.

結 果

切除した腸組織の組織学検査では,広範囲の粘膜壊死,偽膜の形成,気腫,および壊死区域が交互に混在している上皮の再生の所見が認められた ― これらの所見は,壊死性腸炎の診断と一致するものである.グラム染色では,大型のグラム陽性桿菌であることが示されたが,この特徴はクロストリジウムの菌種の特徴と一致するものであった.PCR 増幅によって,cpacpb 遺伝子の遺伝子産物が検出されたが,この結果は,C. perfringens の C 型が存在していることを示すものであった.患児の腸の修復手術時に摘出した回腸組織の分析では,C. perfringens は陰性であった.

結 論

糖尿病患者や他の慢性疾患の患者が,チタリングスを料理したり食したりすると,生命にかかわる可能性のある感染症の合併症に陥ることがある.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 342 : 1250 - 3. )