米国における小児の肺炎による死亡,1939~96 年
Mortality from Pneumonia in Children in the United States, 1939 through 1996
S.F. DOWELL, B.A. KUPRONIS, E.R. ZELL, AND D.K. SHAY
肺炎は今日でもなお,世界中の小児期死亡の大きな原因の一つであるが,先進国では,この死亡率は減少してきている.
米国における,1939~96 年の小児の死亡記録の詳細な調査を行った.肺炎による死亡者数の年間変化率をプロットし,これを利用して各種のイベントと介入の影響についての仮説を立てた.そして,これらの仮説を検証するために,全米退院調査(National Hospital Discharge Survey),メディケイド(65 歳未満の低所得者・身障者を対象とした国民医療保障制度)プログラム,および公表報告書のデータを用いた.
58 年間の調査期間中に,肺炎による小児の死亡者数は,1939 年に 24,637 人であったのが 1996 年には 800 人へと,97%減少していた.これと同じ期間に,肺炎以外の死因による死亡率も 82%低下していた.肺炎による死亡率は,1944~50 年の期間には急激な低下がみられたが,1957 年には年長の小児で上昇し,1966~82 年の期間には,全年齢群で持続的な低下がみられた.1966~82 年には,死亡率は毎年平均で 13.0%低下していたが,これらの低下は,メディケイドが適用された貧困層の小児の割合が増加したこと,肺炎による入院率が上昇したこと,黒人小児の死亡率と白人小児の死亡率の差が縮小してきたこと,および南部地域の死亡率と他の三つの国勢調査地域の死亡率が収束してきたことと一致していた.
1939 年以降,米国では,小児の肺炎による死亡率が著しく低下してきている.この死亡率について,1940 年代後半の急激な低下はペニシリンの使用によるものであるという仮説,1957 年の一過性の上昇はインフルエンザ A が全国的に流行したためであるという仮説,そして 1966~82 年の持続的な低下は,貧困層の小児における医療アクセスが改善されたことが一因かもしれないという仮説を立てた.