February 10, 2000 Vol. 342 No. 6
強化療法の試験から 4 年後の 1 型糖尿病患者における網膜症と腎症
Retinopathy and Nephropathy in Patients with Type 1 Diabetes Four Years after a Trail of Intensive Therapy
THE DIABETES CONTROL AND COMPLICATIONS TRIAL/EPIDEMIOLOGY OF DIABETES INTERVENTIONS AND COMPLICATIONS RESEARCH GROUP
1 型糖尿病の患者に対する強化療法(血糖値とグリコヘモグロビン値をほぼ正常値に回復させることを目的とした治療)は,従来の治療法と比較して,微小血管系の合併症のリスクを著しく低下させる.これらの有益性が持続するのかどうかを評価するために,糖尿病の管理と合併症に関する試験(DCCT:Diabetes Control and Complications Trial)の終了後 4 年間にわたって,その試験で実施された強化療法と従来療法の,網膜症および腎症の発症と重症度に対する効果を比較した.
DCCT の終了時に,従来療法群の患者には強化療法が薦められ,試験に参加していたすべての患者の治療は各患者の担当医に戻された.網膜症については,DCCT 終了後 4 年目に,1,208 例の患者の眼底写真を 1 ヵ所で集中判定したグレード評価に基づいて評価し,腎症については,試験後 3 年または 4 年目に,1,302 人から採取した尿検体を用いて評価した.なお,これらの患者の約半数がそれぞれの治療群に属していた患者であった.
DCCT の 6.5 年間の試験期間中に,グリコヘモグロビンの中央値に認められた従来療法群と強化療法群の群間差(平均で,それぞれ 9.1%および 7.2%)は,追跡調査の期間中に縮小した(4 年間の中央値で,それぞれ 8.2%および 7.9%; p< 0.001).それにもかかわらず,増殖性網膜症,黄斑浮腫,およびレーザー療法を必要性とするするような網膜症の悪化が認められた患者の比率は,強化療法群のほうが従来療法群よりも低かった(オッズの低下,72% 対 87%; p< 0.001).アルブミンの尿中排泄が増加していた患者の割合は,強化療法群で有意に少なかった.
1 型糖尿病患者において強化療法によって得られた進行性の網膜症および腎症のリスクの低下は,高血糖症の悪化にもかかわらず,少なくとも 4 年間は持続する.