急性(非劇症型)心筋炎との比較における劇症型心筋炎の長期転帰
Long-Term Outcome of Fulminant Myocarditis as Compared with Acute (Nonfulminant) Myocarditis
R.E. MCCARTHY III AND OTHERS
リンパ球性心筋炎は,持続性あるいは可逆性の左室機能障害を引き起す.心室機能が回復する患者と拡張型心筋症に進行する患者を予測できるような臨床基準は得られていない.そこで,われわれは,劇症型心筋炎の患者が急性(非劇症型)心筋炎の患者よりも長期予後が良好であるかもしれないという仮説をたてた.
心内膜心筋生検の所見とダラス組織病理学基準によって心筋炎と考えられた 147 例の患者を同定した.劇症型心筋炎の診断は,重症の血行力学障害の存在,症状の急速な発現,および発熱などの,その症状発現時の臨床特徴に基づいて行った.急性心筋炎の患者にはこれらの特徴は認められなかった.本研究のエンドポイントの発生,すなわち死亡または心臓移植の施行については,患者や患者の家族への連絡,あるいは国民死亡記録(the National Death Index)の検索にて確認した.追跡調査の平均期間は 5.6 年間であった.
全体で,15 例が劇症型心筋炎の診断基準に合致し,132 例が急性心筋炎の診断基準を満たしていた.劇症型心筋炎の患者では,生検後 11 年目の時点において,その 93%が心臓移植を受けることなく生存していたのに対して(95%信頼区間,59~99%),急性心筋炎の患者では 45%にすぎなかった(95%信頼区間,30~58%;log-rank 検定で p = 0.05).劇症型心筋炎は,年齢,組織病理学所見,および血行力学変数で補正すると,生存の独立した予測因子であった.ダラス組織病理学基準によって,境界線の心筋炎と考えられた患者と活動型の心筋炎と考えられた患者とのあいだには,心臓移植無施行での生存率に有意な差は認められなかった.
劇症型心筋炎は,長期予後が非常に良好な,特異な臨床概念である.この病態の患者には,積極的な血行動態のサポートを行う根拠がある.