急性心筋梗塞の糖尿病患者の予後に対する既往冠動脈バイパス手術の効果
The Effect of Previous Coronary-Artery Bypass Surgery on the Prognosis of Patients with Diabetes Who Have Acute Myocardial Infarction
K.M. DETRE AND OTHERS
糖尿病患者における心筋梗塞は高い死亡率と関連している.今回,われわれは,過去に受けた冠動脈バイパス術(CABG)による血行再建法が,経皮的冠動脈形成術(PTCA)と比較して,このような患者の予後に影響を及ぼしているのかどうかについて検討した.
バイパス術および血管形成術による血行再建法の研究(the Bypass Angioplasty Revascularization Investigation)に適格で,この研究に組み入れられてから 3 ヵ月以内に冠動脈血行再建術を受けたすべての患者を,糖尿病に罹患していたか否かということ,および CABG を初回治療あるいは PTCA 後の治療のいずれかとして受けていたかどうかによって分類した.CABG の保護効果は,続発した自発性 Q 波心筋梗塞の有無での死亡に対する保護効果を,Cox の回帰モデルを用いて推定した.
糖尿病の患者 641 例と非糖尿病の患者 2,962 例では,その累積 5 年死亡率はそれぞれ 20%および 8%(p<0.001)であり,自発性 Q 波心筋梗塞の 5 年発症率はそれぞれ 8%および 4%(p<0.001)であった.CABG は,糖尿病患者においては,自発性 Q 波心筋梗塞発症後の死亡のリスクを大きく低下させた(相対危険度,0.09; 95%信頼区間,0.03~0.29).また,CABG を受けていたが自発性 Q 波心筋梗塞が発症しなかった糖尿病患者では,これに対応した死亡の相対危険度は 0.65 であった(95%信頼区間,0.45~0.94).これに対して,非糖尿病の患者では,どのような CABG の保護効果も認められなかった.
糖尿病の患者では,過去に受けた冠動脈バイパス術の前治療が,冠動脈形成術と比較して,心筋梗塞後の予後に対して非常に好ましい影響を及ぼしているが,この有益効果は梗塞を発症していない患者では小さくなる.今回の結果は,多枝病変の冠動脈疾患を併発している糖尿病患者において,どのような種類の冠動脈血行再建法を選択するかということに影響を与えるはずである.