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October 19, 2000 Vol. 343 No. 16

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冠動脈心疾患の独立した予測因子としてのリポ蛋白関連ホスホリパーゼ A2
Lipoprotein-Associated Phospholipase A2 as an Independent Predictor of Coronary Heart Disease

C.J. PACKARD AND OTHERS

背景

慢性の炎症は,冠動脈血管に破綻しやすい動脈硬化性プラークを形成することで,冠動脈イベントリスクを上昇させると考えられている.われわれは,冠動脈イベントの予防におけるプラバスタチンの価値を評価した試験の一つである西スコットランド冠動脈予防試験(West of Scotland Coronary Prevention Study)に組み入れられた高コレステロール血症の男性において,炎症によって影響を受ける可能性のある血液成分が,リスクの予測因子であるか検討した.

方 法

冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞,冠動脈心疾患による死亡,または血行再建の手技)が生じた 580 例の男性に対して,同一コホートから,冠動脈イベントが生じたことのない 2 例の対照を,年齢と喫煙状態に関してマッチさせた(計 1,160 例).この試験の開始時には,リポ蛋白関連ホスホリパーゼ A2,C 反応性蛋白(CRP),フィブリノゲンの濃度と白血球数が,既知のその他の危険因子とともに測定されていた.これらの変数と冠動脈イベントのリスクとの関連については,測定値をその五分位点によって範囲別に層分けし,回帰モデルを用いて検定した.

結 果

CRP 濃度,白血球数,およびフィブリノゲン濃度は,冠動脈イベントのリスクの強力な予測因子であった; すなわち,本研究のコホートでは,これらの各変数の最大五分位群に含まれるコホートのリスクは,最小五分位群に含まれるコホートの約 2 倍であった.しかし,これらの変数とリスクとのあいだに認められた関連は,多変量モデルに年齢,収縮期血圧,およびリポ蛋白濃度を加えると,著明に減弱された.炎症のメディエータによって発現を調節されているリポ蛋白関連ホスホリパーゼ A2(血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ)の濃度には,リスクとの強力な正の関連性があり,他の因子との交絡は認められなかった.すなわち,このリポ蛋白関連ホスホリパーゼ A2 の濃度とリスクとのあいだに認められた関連は,この濃度の最大五分位群のリスクが,最小五分位群のリスクのほぼ 2 倍というものであった.

結 論

炎症マーカーは,冠動脈イベントのリスクの予測因子であるが,これらの炎症マーカーの予測能は,他の冠動脈の危険因子との関連によって減弱される.リポ蛋白関連ホスホリパーゼ A2 の濃度の上昇は,冠動脈心疾患の強力な危険因子と考えられるが,これはアテローム発生およびリスク評価に関して有意義な知見である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 1148 - 55. )