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November 2, 2000 Vol. 343 No. 18

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家庭内でのインフルエンザ予防を目的とした吸入ザナミビル
Inhaled Zanamivir for the Prevention of Influenza in Families

F.G. HAYDEN AND OTHERS

背景

家庭内でのインフルエンザ予防にはアマンタジンやリマンタジン(rimantadine)が用いられるが,その効果は一貫していない.その理由の一つに,治療された発端患者からの薬剤耐性変異体の伝播がである.そこでわれわれは,家庭内におけるインフルエンザの治療と予防を目的とした吸入ザナミビル(zanamivir)の二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した.

方 法

1998~99 年のインフルエンザ流行期前に,家族(家族の人数が 2~5 人で,5 歳以上の小児が 1 人以上いる)を試験に組み入れた.家族の 1 人にインフルエンザ様の症状が発現した場合に,その家族を,ザナミビル吸入またはプラセボ吸入に無作為に割り付けた.発端者には,ザナミビル 10 mg(163 例)またはプラセボ(158 例)の 1 日 2 回,5 日間の吸入を行い,その他の家族には,予防として,ザナミビル 10 mg(414 例)またはプラセボ(423 例)の 1 日 1 回,10 日間の吸入を行った.主要エンドポイントは,家庭内接触者の 1 人以上に症状が発現し,検査でインフルエンザの診断が確定した家族の割合とした.

結 果

当初は健康であった家庭内接触者の 1 人以上がインフルエンザを発症した家族の割合は,ザナミビル群のほうがプラセボ群よりも小さかった(4% 対 19%,p<0.001);この差は,接触者 1 人以上がインフルエンザに罹患する家族の割合の 79%減少に相当する.ザナミビルはインフルエンザ A 型と B 型の両方に対して予防効果があった.ノイラミニダーゼ阻害薬感受性検査と,ノイラミニダーゼ遺伝子および赤血球凝集素遺伝子の塩基配列決定法からは,ザナミビル耐性変異株は発見されなかった.検査でインフルエンザが確定した発端患者における症状持続期間の中央値は,ザナミビル群のほうがプラセボ群よりも 2.5 日短かった(5.0 日 対 7.5 日,p=0.01).ザナミビルの忍容性は良好であった.

結 論

発端患者の治療と併せて行う,その家族に対する予防治療として,ザナミビルの 1 日 1 回吸入は,忍容性に優れ,インフルエンザの発症を予防する.本試験では,耐性インフルエンザウイルスの出現を示す証拠は得られなかった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 1282 - 9. )