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August 10, 2000 Vol. 343 No. 6

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急性心筋梗塞において組織プラスミノーゲンアクチベータと比較した冠動脈ステント留置と血小板膜糖蛋白 IIb/IIIa 遮断の併用
Coronary Stenting plus Platelet Glycoprotein IIb/IIIa Blockade Compared with Tissue Plasminogen Activator in AMI

A. SCHOMIG AND OTHERS

背景

急性心筋梗塞の患者においては,心筋障害を防ぐことがすべての再灌流療法の主目的である.現在,各種の再灌流戦略の相対的な効果についての研究が精力的に行われている.われわれは,血小板膜糖蛋白 IIb/IIIa 受容体遮断を併用した冠動脈ステント留置のほうが,組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)の一種であるアルテプラーゼの高速点滴による血栓溶解療法よりも,救済される心筋の程度が大きいかどうかを評価した.

方 法

無作為化試験に患者 140 例を組み入れ,71 例をステントとアブシキシマブ(abciximab)の併用に,69 例をアルテプラーゼの静脈内投与に割り付けた.主要エンドポイントは,テクネシウム Tc 99m(99mTc)のセスタミビ(sestamibi)を用いたシンチグラフィの連続検査によって測定した心筋の救済の程度とした.副次的エンドポイントは,無作為化後 6 ヵ月以内の死亡,心筋梗塞再発,脳卒中の総合評価とした.

結 果

最終的な梗塞巣の大きさは,中央値で,ステント+アブシキシマブ群で左室の 14.3%(25 パーセンタイル:6.8%,75 パーセンタイル:24.5%)であったのに対し,アルテプラーゼ群では 19.4%(25 パーセンタイル:7.9%,75 パーセンタイル:34.2%)であった(p = 0.02).この差は,ステント群の救済指数(救済された左室の割合を,発症初期の灌流不足によって障害を受けた左室の割合で除したもの)が大きかったことによるものであり,救済指数は,ステント群で 0.57(25 パーセンタイル:0.35,75 パーセンタイル:0.69)であったのに対し,アルテプラーゼ群では 0.26 であった(25 パーセンタイル:0.09,75 パーセンタイル:0.61;p < 0.001).6 ヵ月の時点における死亡,心筋梗塞再発,脳卒中の累積発生率は,ステント群のほうがアルテプラーゼ群よりも低かった(8.5% 対 23.2%,p = 0.02;相対リスク,0.34;95%信頼区間,0.13~0.88).

結 論

急性心筋梗塞の患者では,組織プラスミノーゲンアクチベータによる血栓溶解療法よりも,冠動脈ステント留置にアブシキシマブを併用する治療によって,救済される心筋の程度が大きくなるとともに,臨床転帰も改善される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 385 - 91. )