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September 14, 2000 Vol. 343 No. 11

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冠動脈疾患の患者における第 VII 因子遺伝子の多形性と心筋梗塞のリスク
Polymorphisms in the Factor VII Gene and the Risk of Myocardial Infarction in Patients with Coronary Artery Disease

D. GIRELLI AND OTHERS

背景

血液凝固第 VII 因子の血漿濃度が高値であれば,冠動脈疾患による死亡の予測因子であると示唆されている.第 VII 因子の濃度の変動には第 VII 因子遺伝子の多型が関与しているので,この多型が,血栓症によって発症が促進される心筋梗塞のリスクと関連している可能性がある.

方 法

合計で 444 例の患者について検討を行ったが,そのうちの 311 例は,血管造影法で重症のアテローム性冠動脈硬化症であることが確認された.これら 311 例の患者のうち 175 例には心筋梗塞の既往があった.さらに対照群として,冠動脈造影像が正常であった 133 例の患者も組み入れた.活性化第 VII 因子の濃度を測定し,第 VII 因子遺伝子の三つの多型,すなわち,プロモーターを含んだ遺伝子の多型(A1 対立遺伝子と A2 対立遺伝子),触媒領域(R353Q)を含んだ遺伝子の多型,およびイントロン 7 を含んだ遺伝子の多型について評価した.

結 果

これらの多型のどれもが第 VII 因子の濃度に影響を及ぼしていた.遺伝子型が A2A2 および QQ であった患者は,活性化第 VII 因子の濃度がもっとも低かった(それぞれの野生遺伝子型の患者の濃度よりも 66%および 72%低かった).冠動脈疾患のない患者における各遺伝子型の頻度は,冠動脈疾患のある全集団におけるそれぞれの頻度と同程度であった.冠動脈疾患のある患者群では,心筋梗塞の既往があった患者よりも,心筋梗塞の既往がなかった患者において,A2 対立遺伝子と Q 対立遺伝子のヘテロ接合体およびホモ接合体が有意に多かった(χ2 検定で,プロモーターの多型の存在については p = 0.008,R353Q の多型の存在については p = 0.01).遺伝子型が A1A2 または RQ であった患者の心筋梗塞の補正オッズ比は,0.47(95%信頼区間,0.27~0.81)であった.

結 論

ここで得られた結果は,第 VII 因子のある種の遺伝子型が,心筋梗塞から防御することにおいてなんらかの役割を担っていることを示唆している.これにより,重症のアテローム性冠動脈硬化症が発症しているにもかかわらず,心筋梗塞にはならない患者が存在する理由を説明できるかもしれない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 774 - 80. )