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July 13, 2000 Vol. 343 No. 2

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角膜縁上皮細胞の自己移植による損傷角膜の再形成
Reconstruction of Damaged Corneas by Transplantation of Autologous Limbal Epithelial Cells

R.J.-F. TSAI, L.-M. LI, AND J.-K. CHEN

背景

スティーブンス–ジョンソン症候群,目の天疱瘡,熱傷や化学的熱傷は,角膜の瘢痕化と混濁化を引き起し,失明させることがある.これらに対しては,対側角膜の角膜縁から採取した上皮細胞を移植することによって,実用的な視力を回復させることができる.しかしながら,この手技には移植片として健常眼から大きな角膜縁を摘出する必要があるので,両側性の病変の患者には実施できない.

方 法

一側性の重症角膜疾患の患者 6 例から,対側の健常眼の角膜縁上皮細胞試料を採取した.採取した上皮細胞は,羊膜上で培養して平面的に広がるように増殖させた.角膜内へ伸びてきている血管結合組織を取り除くために,損傷眼球の角膜表層を切除してから,このシート状に増殖した角膜縁の上皮細胞を羊膜につけたまま,角膜表層を摘除した損傷角膜の表面に移植した.平均(±SD)追跡調査期間は 15±2 ヵ月間であった.

結 果

角膜表面全体の上皮再形成は,移植を受けた六つのすべての眼球において移植後 2~4 日以内に認められた.移植後 1 ヵ月目までには,眼球の表面が角膜上皮で被われ,角膜の透明度が改善された.移植を受けた 6 眼球のうちの 5 眼球(83%)では,平均視力は 20/112 から 20/45 に改善した.残りの 1 例の混濁が角膜全体に広がっていた化学的熱傷患者では,40 cm 離れた位置から指の本数を数えられる程度の視力から 20/200 にまで改善した.移植部位の血管新生あるいは炎症の再発は,今回の追跡調査期間中には,どの患者にも認められなかった.

結 論

角膜縁上皮細胞の一側性欠損の患者では,羊膜上で培養した角膜縁上皮細胞の自己移植は,角膜表層を再形成させて実用的な視力を回復させるのに簡便かつ有効な方法である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2000; 343 : 86 - 93. )