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May 10, 2001 Vol. 344 No. 19

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ある地域の保健医療施設におけるバンコマイシン耐性腸球菌の管理
Control of Vancomycin-Resistant Enterococcus in Health Care Facilities in a Region

B.E. OSTROWSKY AND OTHERS

背景

バンコマイシン耐性腸球菌がはじめて検出されたのは,1996 年,アイオワ州,ネブラスカ州,サウスダコタ州にまたがるスーランド地域でのことであった.特別委員会が結成され,1997 年には,その地域の施設におけるバンコマイシン耐性腸球菌の保菌率の評価と,その地域にある 32 のすべての保健医療施設においてスクリーニング,感染症管理,および教育に関する勧告を実践させるために,疾病管理センター(the Centers for Disease Control and Prevention)に支援が求められた.

方 法

感染症管理の介入については,1998 年 10 月と 1999 年 10 月に評価した.時点保菌率の調査を行うとともに,バンコマイシン耐性腸球菌の胃腸管内コロニー形成についての症例対照研究を実施し,スーランド地域の急性期医療施設と長期医療施設におけるバンコマイシン耐性腸球菌に対する感染症管理の実践およびスクリーニング方針の比較を行った.

結 果

肛門周囲のスワブ検体は,1998 年には 2,196 例の適格患者のうち 1,954 例(89%)から,1999 年には 2,049 例の適格患者のうち 1,820 例から採取された.3 年間の全研究期間を通して参加した 30 施設の全体におけるバンコマイシン耐性腸球菌の保菌率は,1997 年には 2.2%であったのが,1998 年には 1.4%,1999 年には 0.5%に低下した(傾向性の χ2 検定で p<0.001).バンコマイシン耐性腸球菌の保菌患者が少なくとも 1 例同定された施設は,1997 年には 15 施設であったのが,1998 年には 10 施設,1999 年には 5 施設に減少した.急性期医療施設と長期医療施設のどちらの施設においても,バンコマイシン耐性腸球菌のコロニー形成の危険因子は,入院の既往歴と抗菌薬による治療歴であった.長期医療施設では,そのほとんどの施設においてバンコマイシン耐性腸球菌のスクリーニングが行われており(1998 年には 28 施設中の 26 施設 [93%],1999 年には 25 施設中の 23 施設 [92%]),バンコマイシン耐性腸球菌の伝播を防ぐための感染症管理の方策も制定されていた(1999 年には 25 施設中の 22 施設 [88%]).四つのすべての急性期医療施設でも,1998 年および 1999 年にはバンコマイシン耐性腸球菌のスクリーニングが実施され,その感染症管理の方策も制定されていた.

結 論

監視培養の実施と感染患者の隔離などを含む感染症管理の積極的な介入を行うことによって,その地域の保健医療施設におけるバンコマイシン耐性腸球菌の伝播を減少あるいは消滅させることが可能である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 1427 - 33. )