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June 14, 2001 Vol. 344 No. 24

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1999 年のニューヨーク市地域における西ナイルウイルス感染の集団発生
The Outbreak of West Nile Virus Infection in the New York City Area in 1999

D. NASH AND OTHERS

背景

1999 年 8 月末に,筋力低下を伴った髄膜脳炎の症例の尋常ではない集積が,ニューヨーク市保健局(the New York City Department of Health)に報告された.そして,初期の疫学および環境調査から,アルボウイルスが原因ではないかと考えられた.

方 法

ウイルス脳炎および髄膜炎で入院した患者を同定するために,能動的監視が実施された.これらが疑われた症例に対しては,アルボウイルス感染症であることの確証を得るために,髄液,血清,および組織の検体を採取して,血清学的検査とウイルス検査が実施された.

結 果

ニューヨーク市地域において 1999 年 8 ~ 9 月までの期間に西ナイルウイルス感染で入院していた患者は,集団発生監視によって 59 例同定された.これらの患者の年齢の中央値は 71 歳(範囲,5 ~ 90 歳)であった.臨床的に顕在化した西ナイルウイルス感染の全体の発病率は,100 万人当り少なくとも 6.5 人で,年齢とともに急激に上昇していた.患者の大部分(63%)に脳炎の臨床徴候が認められた;死亡した患者は 7 例(12%)であった.筋力低下は患者の 27%,弛緩性麻痺は 10%に認められた;弛緩性麻痺が認められた患者は,その全例において,神経伝導試験によって多発性軸索神経障害であることが示された.年齢が 75 歳以上であることが死亡の独立した危険因子であり(糖尿病の有無で補正した相対危険度,8.5:95%信頼区間,1.2 ~ 59.1),糖尿病の存在も危険因子となっていた(年齢で補正した相対危険度,5.1;95%信頼区間,1.5 ~ 17.3).

結 論

今回のニューヨーク市の大都市圏における西ナイル髄膜脳炎の集団発生が意味していることは,このウイルスが西半球ではじめて検出されたということである.今後このウイルスが急速に蔓延すると仮定するならば,米国の東海岸沿いの医師は,夏期における脳炎とウイルス性髄膜炎の鑑別診断では,とくに高齢患者と筋力が低下した患者に対しては,西ナイルウイルス感染を考慮に入れるべきであろう.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 1807 - 14. )