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March 1, 2001 Vol. 344 No. 9

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血管再建に適すると考えられる患者に対する冠動脈血管再建術の実施不足
Underuse of Coronary Revascularization Procedures in Patients Considered Appropriate Candidates for Revascularization

H. HEMINGWAY AND OTHERS

背景

専門家委員会による治療の適切性の評価は,個々の臨床医によって下されている一定しない決定よりも,実際の診療のための優れた手引きを提供してくれるかもしれないが,それにもかかわらず,臨床転帰に関する前向き研究は実施されていない.われわれは,さまざまな臨床状況において血管再建の適切性の程度の評価によって定義した適応群ごとに,血管造影法後に薬物治療を受けた患者と血管再建術を受けた患者の臨床転帰について比較した.

方 法

この研究は,ロンドンの三つの病院で冠動脈の血管造影法を受けることになっていた連続した患者を対象とした前向き研究であった.研究への患者の募集を開始する前に,9 名の委員で構成された専門家委員会によって,経皮的経管的冠動脈形成術(PTCA)と冠動脈バイパス移植術(CABG)の適切性が,特異的臨床適応に対して 9 点満点の尺度で評価された(1 点は非常に不適切,9 点は非常に適切であることを示す).こうして得られた評価を,冠動脈疾患の患者集団に適用した.しかし,各患者の治療は,これらの評価には関係なく行われた.追跡調査は,合計 2,552 例の患者に対して,血管造影法を実施してから中央値で 30 ヵ月間行った.

結 果

PTCA が適切(スコア,7~9 点)であると評価された適応患者 908 例では,そのうちの 34%に薬物治療が行われた; これらの患者では,PTCA を受けた患者よりも,追跡調査中に狭心症にかかりやすかった(オッズ比,1.97; 95%信頼区間,1.29~3.00).CABG が適切であると考えられた適応患者 1,353 例については,そのうちの 26%に薬物治療が行われた;これらの患者は,CABG を受けた患者よりも,死亡または非致死的な心筋梗塞 ―複合主要転帰― が発生しやすく(ハザード比,4.08; 95%信頼区間,2.82~5.93),狭心症にもかかりやすかった(オッズ比,3.03; 95%信頼区間,2.08~4.42).さらに,適切性の尺度全体にわたって,この評価と転帰のあいだには段階的な関係が認められた(線形傾向性について p = 0.002).

結 論

専門家委員会の評価に基づいた検討において,冠動脈血管再建術の適切であると考えられる患者に対して,冠動脈血管再建があまり実施されていないことが確認された.しかも,このような実施不足は,有害な臨床転帰に結びついていた.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 645 - 54. )