September 6, 2001 Vol. 345 No. 10
HIV 感染患者における GB ウイルス C 感染と死亡率の低下
Infection with GB Virus C and Reduced Mortality among HIV-Infected Patients
H.L. TILLMANN AND OTHERS
フラビウイルス属の GB ウイルス C(GBV-C,G 型肝炎ウイルスとも呼ばれている)は,肝炎ウイルスの探索において同定されたが,今までのところ,このウイルスに関連している疾患は知られていない.われわれは,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した患者において,GBV-C との重複感染と長期転帰との関係について検討した.
合計で 197 例の HIV 陽性患者を,1993 年または 1994 年から前向きに追跡調査した.これらの患者のうち,33 例(16.8%)は GBV-C RNA 検査で陽性で,112 例(56.9%)は GBV-C のエンベロープ蛋白 E2 に対する抗体が検出され,52 例(26.4%)は GBV-C 感染のマーカーが認められず GBV-C に曝露されていないものと考えられた.GBV-C 感染と HIV 感染症の進行との関係について評価した.さらに,GBV-C ウイルス負荷量と,CD4+ 細胞数および HIV 負荷量の両者とのあいだの相関の可能性を究明するために,GBV-C 陽性血漿 169 検体を定量的な分枝 DNA(bDNA)分析によって分析した.
GBV-C RNA 検査で陽性の患者では,生存期間が有意に長く,後天性免疫不全症候群(AIDS)への進行が遅くなっていた(どちらの比較でも p < 0.001).AIDS 発症後の生存期間も GBV-C 陽性患者で長かった.GBV-C ウイルス血症と,死亡率の低下との関連は,年齢と CD4+ 細胞数によって層別した解析でも有意なままであった.高活性抗レトロウイルス療法が使用可能になった以降の年に限った解析でも,GBV-C RNA の存在は長期生存の予測因子のままであった(p = 0.02).HIV 負荷量は,GBV-C 陰性患者よりも GBV-C 陽性患者で少なかった.GBV-C 負荷量は,HIV 負荷量と逆相関を示したが(r = - 0.33,p < 0.001),CD4+ 細胞数との相関は認められなかった.
HIV 感染患者において,GBV-C との重複感染は死亡率の低下に関連している.GBV-C が原因になっている疾患はわかっていないが,その存在が HIV 複製の阻害に導いているという可能性がある.しかし,GBV-C 感染が,HIV に対する好ましい反応に導く他の要因の存在を示すマーカーの一つにすぎないという可能性もある.