September 6, 2001 Vol. 345 No. 10
心臓移植後の心機能に対する交感神経再支配の影響
Effect of Sympathetic Reinnervation on Cardiac Performance after Heart Transplantation
F.M. BENGEL AND OTHERS
心臓移植後時間が経つと,限定された程度ではあるが移植心臓に再神経支配が起こることがある.この再神経支配の,心機能および運動能に対する影響についてはほとんどわかっていない.
29 例の心臓移植レシピエントにおいて,カテコールアミン類似化合物の[11C]ヒドロキシエフェドリンを用いた陽電子放射断層撮影法(PET)にて,心筋の再神経支配の程度を非侵襲的に定量した.安静時および標準化された運動負荷試験中における全体および局所の心室機能を,RI 血管造影法を用いて測定し,その結果を 10 例の健常対照者の測定結果と比較した.
交感神経再支配は,主に前中隔壁において,29 例の移植レシピエントのうちの 16 例に存在していた.安静時には,再神経支配が現れた患者と除神経の患者とのあいだに,血行力学上の差は観察されなかった.しかし,後者の群では,平均(±SD)運動時間が短く(6.1±1.5 分間,これに対して再神経支配群では 8.2±1.2 分間;p<0.01),最大心拍数が低かった(121±13 回/分 対 143±15 回/分,p<0.01).運動に対する収縮反応は,再神経支配の現れた移植レシピエントにおいて有意に増大しており,正常対照者の反応と同程度であった.多変量解析では,ヒドロキシエフェドリンの貯留が,駆出率における運動誘発性上昇の唯一の独立決定因子であった.
心臓移植レシピエントでは,交感神経支配の修復が,運動に対する心拍数および収縮機能の反応の改善に関連している.これらの結果は,移植心臓における再神経支配の機能的重要性を裏付けるものである.