ファブリー病に対する遺伝子組換えヒトα-ガラクトシダーゼ A 補充療法の安全性および有効性
Safety and Efficacy of Recombinant Human α-Galactosidase A Replacement Therapy in Fabry’s Disease
C.M. ENG AND OTHERS
ファブリー病,すなわちリソソーム α-ガラクトシダーゼ A 欠損症は,グロボトリアオシルセラミドと,これに関連したグリコスフィンゴリピドの進行性蓄積が原因となって発症する.ファブリー病の患者には,腎臓,心臓,および脳の微小血管病変が存在している.
多施設共同のプラセボを対照とした二重盲検無作為比較試験において,58 例の患者に遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A を 2 週間間隔で 20 週間投与し,その安全性と有効性について評価した.その後は,すべての患者が,非盲検法での延長試験において遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A の投与を受けた.有効性の主要エンドポイントは,腎臓の微小血管内皮へのグロボトリアオシルセラミドの沈着が消失(正常または正常に近いレベルにまで減少)した患者の割合とした.さらに,心内膜心筋と皮膚におけるグロボトリアオシルセラミドの微小血管内皮への沈着の組織学的消失,疼痛の程度や QOL の変化などについても評価した.
二重盲検試験では,20 週後にグロボトリアオシルセラミドの微小血管内皮への沈着が認められなかったのは,遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A 群では 29 例中 20 例(69%)であったのに対し,プラセボ群の 29 例にはいなかった(p<0.001)。遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A 群の患者では,皮膚(p<0.001)および心臓(p<0.001)においても,グロボトリアオシルセラミドの微小血管内皮への沈着が減少していた.グロボトリアオシルセラミドの血漿内濃度と微小血管への沈着には,直接的な相関関係が認められた.非盲検療法の 6 ヵ月後には,生検が行われた二重盲検試験のプラセボ群のすべての患者と遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A 群の患者の 98%において,グロボトリアオシルセラミドの微小血管内皮への沈着が消失していた.また,遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A 群では,軽度から中等度の注入反応(たとえば,硬結や発熱など)が,プラセボ群よりも多く発現していた.
ファブリー病の患者に対する遺伝子組換え α-ガラクトシダーゼ A の補充療法は,腎臓,心臓,および皮膚の微小血管内皮へのグロボトリアオシルセラミドの沈着を消失させ,この疾患の主要な臨床症状を発現させている病因を改善した.