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May 23, 2002 Vol. 346 No. 21

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高地肺水腫の予防のためのサルメテロール
Salmeterol for the Prevention of High-Altitude Pulmonary Edema

C. SARTORI AND OTHERS

背景

肺水腫は,気腔へ水を押しやる力とそれを排除する生理的機序とのあいだの持続的不均衡によって起る.生理的機序のうち,肺胞の能動的な経上皮的ナトリウム輸送によって引き起される液体吸収が重要な役割を果している;したがってこの機序の欠陥は,患者にとって肺水腫の素因となる可能性がある.β アドレナリン作動薬は,動物モデルにおいて肺胞液クリアランスを上昇させて,肺水腫を減弱させる.

方 法

二重盲検無作為プラセボ対照試験において,高地肺水腫への感受性が高い被験者 37 人を対象に,高地曝露時(4,559 m,22 時間以内に到達)における肺水腫の発症率に及ぼす β アドレナリン作動薬サルメテロールの予防的吸入の効果を評価した.また高地肺水腫を発症しやすい登山家 33 人と高地肺水腫に抵抗性を示す登山家 33 人を対象に,遠位気道における経上皮的ナトリウム・水輸送のマーカーである鼻の経上皮電位差も測定した.

結 果

サルメテロールの予防的吸入は感受性の高い被験者における高地肺水腫の発症率を 50%以上低下させ,プラセボ吸入の 74%から 33%となった(P=0.02).低地条件下での鼻の電位差値は,高地肺水腫の感受性が高い被験者において,感受性を示さない被験者よりも 30%以上低かった(P<0.001).

結 論

β アドレナリン作動薬の予防的吸入は,高地肺水腫のリスクを減少させる.高地肺水腫の感受性の高い患者では,気道からのナトリウム依存的な液体吸収に欠陥があるのかもしれない.これらの知見は,ナトリウム駆動性肺胞液クリアランスがヒトの肺水腫の発症に役割をもっており,それゆえ治療の適切な標的を示すという概念を支持している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 346 : 1631 - 6. )