October 3, 2002 Vol. 347 No. 14
急性一酸化炭素中毒に対する高圧酸素
Hyperbaric Oxygen for Acute Carbon Monoxide Poisoning
L.K. WEAVER AND OTHERS
急性一酸化炭素中毒患者では,認知機能面の後遺症がよく起る.このような認知性後遺症に対する高圧酸素治療の効果を評価するために,われわれは二重盲検無作為試験を実施した.
急性一酸化炭素中毒症状のある患者を,治療室収容 3 回コースに 24 時間以内に無作為に均等に割付けた.コースは 3 回の高圧酸素治療,あるいは 1 回の常圧酸素治療と 2 回の常圧大気曝露の組み合せとした.酸素治療は,再呼吸を防止するフェイスマスクまたは気管内チューブを介して,高流量ボンベから実施した.神経心理学的検査は,1 回目と 3 回目の治療室収容直後,ならびに登録後 2 週,6 週,6 ヵ月,12 ヵ月後に実施した.主要転帰は一酸化炭素中毒の 6 週後における認知機能後遺症とした.
試験は予定していた 4 回の中間解析のうち 3 回目が終わったあとに中止した.この時点で各群 76 例の患者がいた.6 週後の認知機能後遺症は,常圧酸素群(76 例中 35 例[46.1%])より高圧酸素群のほうで頻度が少なかった(76 例中 19 例[25.0%],P=0.007).これは小脳の機能障害および層別化変数で補正しても変らなかった(補正オッズ比 0.45[95%信頼区間 0.22~0.92];P=0.03).治療前の小脳機能障害の存在は,認知機能後遺症の発症と関連し(オッズ比 5.71[95%信頼区間 1.69~19.31];P=0.005),常圧酸素群でより頻繁にみられた(15% 対 4%,P=0.03).intention-to-treat 解析によると,認知機能後遺症は,12 ヵ月後の高圧酸素群でより頻度が少なかった(P=0.04).
24 時間以内に行う 3 回の高圧酸素治療は,急性一酸化炭素中毒の 6 週後および12 ヵ月後における認知機能後遺症のリスクを低下させると考えられる.