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October 10, 2002 Vol. 347 No. 15

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アトピー性皮膚炎における内因性の抗菌性ペプチドと皮膚感染
Endogenous Antimicrobial Peptides and Skin Infections in Atopic Dermatitis

P.Y. ONG AND OTHERS

背景

ヒトの皮膚における先天免疫系は,cathelicidins(LL-37)と βデフェンシン(defensins)として知られている抗菌性ペプチドを含んでいる.正常な皮膚では,これらのペプチドはごく微量であるが,乾癬のような炎症性疾患に侵された皮膚では,ペプチドは蓄積する.われわれは,アトピー性皮膚炎患者と乾癬患者の炎症性皮膚に存在する LL-37 とヒト βデフェンシン 2(HBD-2)の発現濃度を比較した.

方 法

乾癬患者,アトピー性皮膚炎患者,および健常被験者から採取した皮膚生検検体中の LL-37 と HBD-2 蛋白の発現を,免疫組織化学分析により測定した.皮膚検体の抽出物中の抗菌性ペプチドの量についても免疫ブロット分析(LL-37)とウェスタンブロット分析(HBD-2)を用いて分析した.定量リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)分析を用いて,皮膚生検検体中の HBD-2 と LL-37 のメッセンジャー RNA(mRNA)の相対的発現を確認した.また,コロニー形成分析を用いて,これらのペプチドの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する抗菌活性についても検討した.

結 果

免疫組織化学分析は,乾癬患者全員の表面表皮に豊富な LL-37 と HBD-2 の存在を確認した.また対照的に,これらペプチドに対する免疫染色は,アトピー性皮膚炎患者の急性および慢性病変では有意に減少した(それぞれ P=0.006,P=0.03).これらの結果は,免疫ブロット分析とウェスタンブロット分析で確認された.リアルタイム RT-PCR では,アトピー性病変のほうが乾癬病変に比べ,HBD-2 mRNA と LL-37 mRNA の発現が有意に少なかったことを示した(それぞれ P=0.009,P=0.02).LL-37 と HBD-2 の組み合せは,S. aureus を効果的に殺菌することにより,相乗的抗菌活性を示した.

結 論

抗菌性ペプチドの発現の不足は,アトピー性皮膚炎患者が S. aureus による皮膚感染に感受性をもつ原因になっている可能性がある.パキスタンにおける

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2002; 347 : 1151 - 60. )