重症肺気腫患者に対する肺容量減少手術の費用効果
Cost Effectiveness of Lung-Volume–Reduction Surgery for Patients with Severe Emphysema
National Emphysema Treatment Trial Research Group
全米肺気腫治療試験(National Emphysema Treatment Trial)は,重症肺気腫に対する肺容量減少手術と内科的治療とを比較する無作為臨床試験であり,前向き経済分析も盛り込まれた.
呼吸リハビリテーション後,17 の医療センターで患者 1,218 例を肺容量減少手術あるいは継続的な内科的治療に無作為に割付けた.医療の利用,投薬,移動や治療を受けるまでに要した時間に対する費用はメディケア請求や試験のデータから得た.費用効果は,臨床試験期間中については計算し,10 年間の追跡期間中については,生存,費用,QOL に関する観察された動向に基づくモデルを用いて推計した.
中間解析で,術後の死亡率が高く,機能状態の改善の見込みがほとんどない患者群を同定した.これらの患者を除外すると,内科的治療と比較した肺容量減少手術の費用効果比は,3 年の時点で QOL で補正した余命延長 1 年当り 190,000 ドル,10 年の時点で QOL で補正した余命延長 1 年当り 53,000 ドルであった.サブグループ解析で,主に肺上葉に肺気腫があり肺リハビリテーション後の運動能力が低い患者で,内科的治療を受けた患者よりも死亡率が低く機能状態がよりよい患者を同定した.このサブグループにおける費用効果比は,3 年の時点で QOL で補正した余命延長 1 年当り 98,000 ドル,10 年の時点で 21,000 ドルであった.サブグループに関する推計値と 10 年間の推計値は,相当に不確かであることがブートストラップ解析で示された.
3 年間の追跡期間での費用と利益を考えると,肺容量減少手術は,内科的治療と比較して費用が高い.予測は相当な不確かさに左右されるが,効果が長期間維持できれば,この手技は費用効果の高い可能性がある.