欧州および豪州における薬剤耐性 HIV-1 感染患者に対するエンフュービルタイドの有効性
Efficacy of Enfuvirtide in Patients Infected with Drug-Resistant HIV-1 in Europe and Australia
A. Lazzarin and Others
T-20 と最適化療法の比較試験 2(T-20 vs. Optimized Regimen Only Study 2; TORO 2)では,融合阻害剤エンフュービルタイド(enfuvirtide)とすでに行われている最適化療法を 24 週間併用する治療の有効性・安全性と,最適化療法のみの場合の有効性・安全性とを比較した.
患者は,以前に 3 つの抗レトロウイルス薬分類に属するそれぞれの薬剤の投与を受けたか,各薬剤分類に耐性があることが判明しているか,またはその両方であり,血漿 1 mL 当りのヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)RNA が 5,000 コピー以上であった.患者を 2:1 の割合で,エンフュービルタイド投与(90 mg を1 日 2 回)を耐性試験により最適化されたすでに行われている療法に加えて行うか(エンフュービルタイド群),その最適化療法のみを行うか(対照群)に無作為に割付けた.
無作為割付けされた患者 512 例のうち,エンフュービルタイド群の 335 例および対照群の 169 例が試験薬の投与を 1 回以上受け,血漿中 HIV-1 RNA の追跡測定を 1 回以上受けた.ベースラインの血漿中 HIV-1 RNA 濃度の中央値は両群とも 5.1 log10 コピー/mL であった.CD4+細胞数の中央値は,エンフュービルタイド群で 98.0 個/mm3,対照群で101.5 個/mm3 であった.患者は先行する治療を中央値 7 年間受け,中央値で 12 種類の抗レトロウイルス薬の投与を受けていた.すでに行われている療法は,両群とも平均 4 種類の抗レトロウイルス薬で構成されていた.24 週間後,最小 2 乗法に基づく血漿中ウイルス量のベースラインからの平均変化量(最終観察を繰り越した intention-to-treat 解析による)は,エンフュービルタイド群では 1.429 log10 コピー/mL の減少,対照群では 0.648 log10 コピー/mL の減少であり,差は 0.781 log10 コピー/mL であった(P<0.001).CD4+細胞数の平均増加量は,エンフュービルタイド群(65.5 個/mm3)で対照群(38.0 個/mm3)よりも大きかった(P=0.02).
以前に複数の抗レトロウイルス薬の投与を受けた患者では,すでに行われている最適化療法にエンフュービルタイドを加えると,24 週間にわたり,有意なウイルス抑制が起り免疫学的な利益が得られた.