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June 5, 2003 Vol. 348 No. 23

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タンデム質量分析計を用いた先天代謝異常の新生児スクリーニング
Screening Newborns for Inborn Errors of Metabolism by Tandem Mass Spectrometry

B. Wilcken, V. Wiley, J. Hammond, and K. Carpenter

背景

エレクトロスプレー・タンデム質量分析計が最近開発されたことにより,多くのまれな先天代謝異常に対する新生児スクリーニングが可能になったが,スクリーニングの有効性と転帰は依然として不明である.われわれは,タンデム質量分析計を用いた新生児スクリーニングが 31 の疾患の診断率に与える影響について検討した.

方 法

4 年間(1998 年 4 月~2002 年 3 月)にタンデム質量分析計によってスクリーニングを受けた新生児 362,000 名において,尿素回路,アミノ酸代謝,有機酸代謝,および脂肪酸酸化に影響を与える 31 の先天異常の発見率を,6 つの先行する 4 年間の出生コホートにおける発見率と比較した.比較は,スクリーニング,診断および診療が集中管理されているオーストラリアのニューサウスウェールズ州とオーストラリア首都特別地域で行った.

結 果

臨床診断が行われた期間における疾患全体の有病率は,1982~98 年のあいだ変化しなかった.タンデム質量分析計を用いてスクリーニングされたコホートでは,フェニルケトン尿症を除く先天異常の有病率は,出生 10 万人当り 15.7 例であり(95%信頼区間 11.9~20.4),それに対して 4 つの先行する 4 年間の出生コホートにおける補正有病率は出生 10 万人当り 8.6~9.5 例であった.新生児スクリーニングが導入されたあとに診断された 57 症例のうち 15 例は臨床的に診断された;その 15 例の新生児のうち 7 例はスクリーニング上は正常な結果であった.とくに中鎖アシル CoA 脱水素酵素欠損症(P<0.001)と他の脂肪酸酸化障害(P=0.007)の発見率は,これらの疾患に対する新生児スクリーニングが実施される以前の 16 年間と比較して増加した.

結 論

臨床的に診断されるよりも多くの症例が,タンデム質量分析計を用いたスクリーニングによって診断される.そのようなスクリーニングで診断された障害を有する患児のうち,スクリーニングが実施されなかった場合,どの患児が症状を呈するようになるのかについてはまだ明らかではない.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 2304 - 12. )