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February 6, 2003 Vol. 348 No. 6

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非家族性肺高血圧症におけるシグナル伝達分子
Signaling Molecules in Nonfamilial Pulmonary Hypertension

L. Du and Others

背景

生化学的,遺伝学的および臨床的知見では,微小肺血管周囲における平滑筋の増殖が,肺高血圧の病因に必須であることが示されている.2 型骨形成因子受容体(BMPR2)の突然変異が家族性肺高血圧の症例と関連付けられているが,一般的な非家族性肺高血圧の分子的機序については明らかではない.

方 法

血管周囲への平滑筋細胞の再配列に関与する蛋白である angiopoietin-1;内皮細胞特異的 angiopoietin-1 受容体である TIE2;1A 型骨形成因子受容体(BMPR1A)および BMPR2 の発現パターンを,肺高血圧症患者および正常血圧の対照患者から得た肺生検検体において評価した.BMPR の発現調節における angiopoietin-1 の効果も,ヒト肺細動脈内皮細胞の継代培養において評価した.

結 果

angiopoietin-1 の mRNA および蛋白自体の発現や TIE2 のリン酸化は,さまざまな病型の肺高血圧症患者の肺において強いアップレギュレーションを受けており,これは,疾患の重症度と直接相関していた.肺細動脈内皮細胞において,angiopoietin-1 が,BMPR2 シグナル伝達に必要な膜貫通蛋白である BMPR1A の発現を止めるという知見により,家族性および後天性肺高血圧症のあいだの機序的な関連が証明された.同様に,非家族性の原発性肺高血圧症患者の肺においても,さまざまな型の非家族性の後天性肺高血圧症患者の肺においても,BMPR1A の発現が著しく減少することを認めた.

結 論

これらの知見は,すべての型の肺高血圧症が,angiopoietin-1,TIE2,BMPR1A および BMPR2 の関与するシグナル伝達経路の欠陥という共通点によって結び付いていることを示唆しており,その結果,治療上介入するさいの特異的標的分子を明らかにしている.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 500 - 9. )