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February 26, 2004 Vol. 350 No. 9

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鎌状赤血球症患者における死亡の危険因子としての肺高血圧症
Pulmonary Hypertension as a Risk Factor for Death in Patients with Sickle Cell Disease

M.T. Gladwin and Others

背景

鎌状赤血球症の成人における肺高血圧症の有病率,その発症機序,ならびに将来的な予後における重要性は不明である.

方 法

連続した患者 195 例(男性 82 例,女性 113 例;平均 [±SD] 年齢 36±12 歳)について,ドップラー心エコーを用いて肺動脈収縮期圧を評価した.肺高血圧症は,三尖弁逆流性ジェット速度が 2.5 m/秒以上と事前に定義した.患者を平均 18 ヵ月間追跡調査し,データは,死亡時あるいは追跡不能になった時点で打ち切った.

結 果

ドップラーで定義される肺高血圧症は,患者の 32%で認められた.三尖弁逆流性ジェット速度が 2.5 m/秒未満あるいは 2.5 m/秒以上の二値変数を用いた多重ロジスティック回帰分析から,肺高血圧症と有意かつ独立に相関するものとして,自己申告による心血管系あるいは腎臓の合併症の既往歴,収縮期血圧の上昇,乳酸脱水素酵素(溶血マーカー)の高値,アルカリホスファターゼの高値,トランスフェリンの低値が同定された.胎児ヘモグロビン値,白血球数,血小板数,ならびにヒドロキシウレア療法の実施は,肺高血圧症と関連しなかった.三尖弁逆流性ジェット速度が 2.5 m/秒未満である場合と比較して,2.5 m/秒以上の速度は,死亡リスクの増加と強く関連しており(率比 10.1;95%信頼区間 2.2~47.0;P<0.001),比例ハザード回帰モデルにおいて他の考えられるリスク因子で補正しても変化しなかった.

結 論

肺高血圧症は,ドップラー心エコーで診断され,鎌状赤血球症の成人に多くみられる.肺高血圧症は慢性溶血の合併症と考えられ,ヒドロキシウレア療法に耐性であり,死亡リスクが高い.鎌状赤血球症で肺高血圧症を有する患者を対象とした治療試験が必要である.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2004; 350 : 886 - 95. )