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January 27, 2005 Vol. 352 No. 4

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肥大型心筋症として発現する糖原病
Glycogen Storage Diseases Presenting as Hypertrophic Cardiomyopathy

M. Arad and Others

背景

原因不明の左室肥大は,サルコメア蛋白の遺伝子障害である肥大型心筋症の診断のきっかけとなることが多い.AMP 活性化プロテインキナーゼ γ2 遺伝子(PRKAG2)の変異は,心筋グリコーゲンの蓄積および肥大型心筋症に似た左室肥大を引き起すため,われわれは,グリコーゲン代謝を調節する遺伝子にそのほかの変異を有する患者でも,肥大型心筋症と臨床的に誤診される可能性があるという仮説を立てた.

方 法

血縁関係のない連続した肥大型心筋症患者 75 例で遺伝子解析を行ったところ,40 個のサルコメア蛋白変異が検出された.変異が検出されなかった 35 例については,PRKAG2,リソソーム関連膜蛋白 2 遺伝子(LAMP2),α ガラクトシダーゼ遺伝子(GLA),酸性 α -1,4-グルコシダーゼ遺伝子(GAA)の検討を行った.

結 果

顕著な肥大と電気生理学的異常を有する発端者では,ファブリー病(GLA)およびポンペ病(GAA)を引き起す遺伝子欠損は見つからなかったが,LAMP2 変異 2 個と PRKAG2 変異 1 個が同定された.この結果から,2 群の独立した一連の患者を追加した研究が必要とされた.重度の肥大(左室壁厚 30 mm 以上)を呈するが,電気生理学的異常は認められない被験者 20 例の遺伝子解析では,LAMP2 PRKAG2 に変異は認められなかった.左室壁厚の増大と心電図に心室の早期興奮が疑われる被験者 24 例の遺伝子解析では,LAMP2 変異 4 個と PRKAG2 変異 7 個が認められた.LAMP2 の欠損と関連する臨床的特徴には,男性であること,重度の左室肥大,若年(年齢 8~17 歳)での発症,心室早期興奮,2 種類の血清蛋白の非症候性の増加があった.

結 論

LAMP2 変異は,通常,多臓器におよぶ糖原病(ダノン病)を引き起すが,原発性心筋症として発現することもある.LAMP2 もしくは PRKAG2 の変異によって生じる糖原病性心筋症は,肥大型心筋症と類似しているが,電気生理学的異常,とくに心室早期興奮で区別される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 352 : 362 - 72. )