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November 17, 2005 Vol. 353 No. 20

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黒色腫における固有の遺伝子変化
Distinct Sets of Genetic Alterations in Melanoma

J.A. Curtin and Others

背景

紫外線曝露は黒色腫の主要な原因であるが,リスクと曝露の関係は複雑である.黒色腫の臨床的な不均一性は,紫外線への感受性が異なり,遺伝的にも明確に区別できる黒色腫の種類によって説明されるという仮説を立てた.

方 法

紫外線曝露の程度が異なる 4 群の黒色腫 126 例を対象に,ゲノム全体での DNA コピー数の変化,および BRAFN-RAS の変異状態を比較した.4 群は,慢性の日光障害を受けた皮膚の黒色腫 30 例,障害を受けていない皮膚の黒色腫 40 例,手掌・足底・爪下(肢端)部位の黒色腫 36 例,粘膜黒色腫 20 例であった.

結 果

4 群の黒色腫のあいだで,局所における DNA コピー数の変化の頻度および BRAF の変異頻度に大きな違いが認められた.検体は,ゲノム DNA コピー数の変化に基づいて,70%の精度で正確に 4 群に分類可能であった.二元配置比較において,慢性日光障害の徴候のある皮膚の黒色腫とそのような徴候のない皮膚の黒色腫とは,84%の精度で正確に分類可能であった.肢端の黒色腫は,89%の精度で粘膜黒色腫と識別可能であった.慢性日光障害のない皮膚の黒色腫では,81%に BRAF 変異または N-RAS 変異があったが,他群の黒色腫の大部分ではいずれの遺伝子にも変異がなかった.野生型の BRAF または N-RAS をもつ黒色腫では,RAS ― BRAF 経路の下流の構成要素である,サイクリン依存性キナーゼ 4(CDK4)とサイクリン D1(CCND1)遺伝子のコピー数が高い頻度で増加していた.

結 論

日光曝露レベルと発生部位がそれぞれ異なる黒色腫で同定された遺伝子変化から,黒色腫の発生にはさまざまな遺伝子経路があることが示唆された.また,BRAFN-RAS に変異のない黒色腫では,独立した癌遺伝子として CDK4CCND1 が関与することが示された.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2005; 353 : 2135 - 47. )