良性乳腺疾患と乳癌のリスク
Benign Breast Disease and the Risk of Breast Cancer
L.C. Hartmann and Others
良性乳腺疾患は,乳癌の重要な危険因子である.このリスクについて信頼できる推定値を得ることを目的とし,良性乳腺疾患の女性の大規模集団で検討を行った.
1967~91 年にメイヨ・クリニック(Mayo Clinic)で良性乳腺疾患と診断された女性全例を同定した.乳癌イベントは,診療記録および質問票で確認した.相対リスクを推定するために,乳癌の実際の症例数と,アイオワ州サーベイランス・疫学・最終転帰登録(Iowa Surveillance, Epidemiology, and End Results registry)の乳癌発生率をもとに算出した,予想される症例数とを比較した.
女性 9,087 例を中央値で 15 年間追跡調査した.組織学的所見では,67%の女性が非増殖性病変,30%が異型を伴わない増殖性病変,4%が異型を伴う過形成であった.現在までのところ,乳癌は 707 件発生した.コホート集団における乳癌の相対リスクは 1.56 で(95%信頼区間 1.45~1.68),このリスクの高さは,生検後少なくとも 25 年間持続した.異型と関連した相対リスクは 4.24(95%信頼区間 3.26~5.41)であったのに対し,異型を伴わない増殖性病変に対する相対リスクは 1.88(95%信頼区間 1.66~2.12),非増殖性病変に対する相対リスクは 1.27(95%信頼区間 1.15~1.41)であった.乳癌の家族歴を入手することができた女性 4,808 例では,家族歴の強さが組織学的所見とは独立した危険因子であった.家族歴がなく,非増殖性の所見を示す女性ではリスク上昇は認められなかった.初回生検後の最初の 10 年間に,とくに異型を伴う女性において,同側の乳房での乳癌の発生数が予想よりも多かった.
良性乳腺疾患の診断後の乳癌の危険因子としては,良性乳腺病変の組織学的分類および乳癌の家族歴があげられる.